メスアカムラサキ   Hipolimnas misippus      タテハチョウ科


<メスアカムラサキの擬態>   こんなに目立ってしまっていいの!

擬態って、目に付かないためにするんじゃなかった? こんなに鮮やかできれいな色で飛び回って、彼女 (これは
メスアカムラサキの♀です) は危なくないのでしょうか! どう考えても目立ちすぎのように思えるのですが・・・。
「はい」目だってもらわないと彼女は、困るのです。なぜって?
  左側のチョウを真似ているんです!!            
       左側はカバマダラ     右側はメスアカムラサキ
<なぜこんなにもカバマダラに似なくてはならなかったのでしょう>
右の花はフウセントウワタです。花がかわいいことや、脹らんだ実が面白いことで、家庭でも栽培されることが多くなりました。
このトウワタの仲間に含まれる成分は、高熱・けいれん性発作・呼吸困難等の原因になり、食べた家畜が数日のうちに死亡することも確認されています。

上の左側に並べたカバマダラというチョウは、幼虫の時代に、このガガイモ科の植物の葉を食草にして由来するアルカロイド(毒の成分)を体に蓄積するという一風変わったチョウです。

このチョウを食べた鳥は、激しい嘔吐を繰り返し苦しみもがくのだそうです。苦い経験をした鳥はどれほど空腹の時でもこの独特の派手な模様のチョウは絶対に食べないそうです。

♀だけが特に擬態しているのは、「卵を産んで子孫を残す」という大役を果たさなければならないからだと考えられています。いくらカバマダラに似ているといっても右側のメスアカムラサキに毒はありません。武器を持たない昆虫が、武器を持つ昆虫に擬態して、「警戒される」という手の込んだ擬態のことを発見者の名前にちなんで「ベーツ擬態」と呼びます。
毒の成分をもつフウセントウワタ
  (名張市長瀬公民館付近の民家にて)

ガガイモ科トウワタ属

この種類は、花の形が皆よく似ています。花の色はオレンジ・黄・ピンク系といろいろで、園芸品種もたくさん開発されています。
周りの環境にひっそりと同化して、「存在しないが如く」に装う擬態とは正反対に、「私を見て!危険よー。」っと大声で叫ぶような大胆な擬態もあるのです。

 ハチに擬態する「ブドウスカシバ」は、蛾の仲間でありながら、捕まえると本とのハチと同じように腹をまげて「刺す」真似をするという念の入った擬態をすることが報告されています。

フロリダ大学の生態学者によりカバマダラ自体も、全てのチョウが毒を溜め込むのではなく、本当に毒の成分を持ったチョウの数は全体で25%に止まっていることが明らかにされてきています。体内に毒を蓄積するという負担をこの25%の個体だけに背負わせることにより、群れの全体にかかる負担を少なくしているカバマダラ(研究対象はオオカバマダラで行われました)の巧みな集団戦略。「本家本元」の巧妙な知恵に驚いてしまいます。
<メスアカムラサキの産卵>
カバマダラに擬態することで、まんまと鳥の目を逃れたメスアカムラサキは、何に産卵するのでしょうか?
人家の近くに良く見られる「スベリヒユ」に産卵します。もちろん「無毒」の植物です。
このスベリヒユは、食用となりヨーロッパでは栽培品種があるそうです。自分の子(幼虫)には無毒の安全な食べ物を与得る知恵も見上げたものです。
ここ桔梗が丘では、この3年間続けて食草とされるスベリヒユではなくて、スミレの葉に産卵しています。スミレの葉によじ登ったために足で踏みつけられたために、直立していた実がグーッと傾いたところです。重そうなお腹が、地面にくっ付きそうになっています。


     

       

   「虫のつぶやき」のTOP(エダナナフシ)へ     「トンボ」へ    虫いろいろへ    参考資料一覧へ

下のボタンをクリックしていただくとそのコンテンツの初めのページにリンクします。