自耕クラブの発足
 大阪にNPO法人シニア自然大学という活動組織がある。私の住んでいる名張市からは、地理的に遠いので、参加をためらっていたが、2006年度に思い切って参加した。
 我々のような年齢の男性は、新しい友人できる事は、とても難しい。女性は簡単に交流の輪が広がって行くようだが、職場を離れた男性は孤独になりがちだ。
 ところがこの組織の活動を通じて、とてもいい仲間ができた。学習活動内容はそれほどでもないが、その他の班や委員会、終ってからの交流会などを通じて、殻を脱ぎ捨ててお互いが語り合える仲間になった。
 そんな人たちが「自耕クラブ」として、この自耕園に定期的に来てくれることになった。
 これまでもいろいろな仲間が、この主旨が気に入ったり、珍しい作物を味わったり、また自然環境のよさを楽しんだりするために、数え切れないくらい訪れてくれた。
 みな感心したり驚いたり、とても気に入ってくれたのだが、 その時だけに終ってしまった。今度は作業にも参加して、調理もして皆で楽しもうということになった。
 そして規約を作り会費を決め、仕事も分担して毎週定期的に参加してくれるという。これまでの集まりは、食事を食べてもらったり、収穫物を持って帰ってもらったり、果樹を取って楽しんでもらったりで、それでも楽しく騒ぎ驚きもあった。
 しかし今度の仲間は、自然大学で学んだせいもあるだろうが、果樹や作物の収穫を楽しみ、その栽培から管理もやってくれるという。交通費も負担して必要経費も分担してくれるのだ。
 実際私は今年二度も20日くらい入院をすることになったが、ひときわ暑かった夏に、何度も畑に侵入する草を払い、堆肥を搬入してくれた。一人畑に出て播種から管理作業をしていても、これまでは収穫のほんのわずかしか利用できないし、おいしい果物も腐らせることが多かった。
 ところが皆が来てくれるので、新しい果樹も植え、美味しい野菜を育て、一緒に楽しもうという張り合いが出てきた。サクランボやイチジクが鳥に食われてしまうと共に嘆き、育ち始めた苗が虫に食われてしまうと私以上に悔しがってくれる。
 よく出来たウドやコゴミも料理して楽しんでくれるし、里芋や玉ねぎなども味の違いをほめてくれる。これまで永年かかって私が育んできた自耕園を、タップリ楽しんでくれるのだ。
 会費は種子や調理器具にあて、参加費はその回の経費を平等に割って負担している。一年目は試験的に試行錯誤を繰り返すつもりだったが、案外スムースに進行している。
 食の安全やスローフードが盛んに語られている。 しかしここでは安心・安全な食事だけではない。旬のものを、最も美味しいときに収穫して、皆でハレの食事を楽しむのが主旨だ。梱包も輸送もしないくていい。
 ご馳走とは、「おんかけはしる」と書く。皆で手分けしてフキノトウやヨモギを摘み、ユキノシタやコゴミを取ってきたりして、てんぷらを揚げ草餅をつき、皆で食事をする。
 きっと我々の遠い昔から、狩猟採集をし、共同で調理し、食を分け合い共に楽しんだことだろう
 自耕園は、私がライフワークとして日本各地の農村を廻り、また幼い頃の農村の面影を描きながら、営々と作ってきた圃場だ。2年や3年土地を借りて作物を作るのとは、根本から違う。果樹も宿根草も、それなりに場所を得ている。
 それに駅からも5分くらいで、周りは住宅地になってしまった。幹線道路に接していないので、ビンや缶など投げ捨てられることもない。サルやシカなどにあらされる心配もない。
 ただ鳥や周囲の猫、害虫には痛めつけられる。したがって所期の収穫を得られないときもあるが、いかに無農薬では難しいかの実証なのだ。
 わたしは仲間が来てくれることで、改めてよりいい物を収穫しようという意欲が湧いてきた。 
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