チャドクガの恐怖
 今年は長雨のせいらしく、チャドクガの発生が大変多い。畑の害虫の中で、私はこのチャドクガが一番嫌いである。イラガやアシナガバチも刺されどころによりつらいが、しかしその刺されたところだけである。
 チャドクガはその周辺はおろか、汗をかいた肌のあちこちに赤い湿疹ができ、その痒さに耐えかねてかきむしると、どんどん範囲が広がってゆく。
 孵化した幼虫は、か弱くて一人では茶や椿などの硬い葉を食いちぎれないらしく、頭を寄せ合って群がっている。こんなときにそっと枝ごと切り落とし、踏み潰してしまえばいいのだが、そのときでも刺針に刺されることもある、
 農薬をかければ案外か弱い害虫なのかもしれない。また自然発生力もそう旺盛ではないらしく、庭の椿や山茶花には発生しなくなった。ところが今年は畑のあちこちにある茶の木の相当部分に見られる。
 一般の人は大変な被害らしく、医者に行かざるを得ないひどさだと言う。私は皮膚の柔らかい二の腕や膝から上など時々やられるし、汗とともに痒さが広がり、仕事どころではなくなる。
 それでも風呂でシャワーをかぶり石鹸で洗い流すと、翌日には元に戻っている。
 農薬を使わない以上、早く発見できれば潰してしまうことができ、いつも夏には注意しているのだが、今年は急に晴れの日が続きだした9月初旬には、もう相当成長していた。
 注意してみると、広く発生している。何回も悩まされることになった。長雨は天敵の活動を弱め、このような害虫に有利なのだろうか。これも一概に言えないようで、大根などそんなに被害はないしモンシロチョウやアゲハの幼虫も多くはない。
 ただ救いはよく観察してみると、コマユバチらしい白い小さな繭が見られる。これらが寄生して拡大を防いでくれているのだろう。
 また長雨のせいか、今年はアマガエルも多い。このカエルは相当高い木の枝にもいて、孵ったばかりの小さな幼虫も食べてくれる。ただこの強烈な刺針に対して、抵抗力を持っているのだろうか。
 毎年庭の山茶花に発生して、夏の草取りのたびに体中をやられて苦しんだために、その木を切り倒してしまったと言う話も聞いた。
 ただ私の子供の頃にはこの被害はなかったような気がする。お茶も自給自足だから、当時も家の周りにお茶の木はあった。まして椿油を絞るためには、相当たくさん椿の木は植えられていた。
 花の蜜を吸いに木にも登ったし、その下の草も刈ったし、実も拾った。それでもほとんど被害にあわなかったのは、やはり非常に少なかったのだろう。庭木にもつつじや山茶花は多く植えられていた。このような痒みはあることはあったが、気にならないほど少ない。
 こう考えてくると、天敵を何かの関係で現代は弱めてしまっているのではないか。
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