1999年8月 腫瘍の成長  



8月2日MRIを受ける。
腫瘍は2cm×1cmに成長


無症候性の髄膜腫で、経過観察していくことになっていた。
暢気な私は、部長先生のお話から、手術は10年後だろうと高をくくっていた。

それが突然「手術」と言われて。。。ショックのあまり「悪性」という言葉が頭をよぎる。髄膜腫には僅かだが、悪性もあるのだ。

居ても立ってもいられない。
職場に診断書を出して、私の心身の状態を理解してもらおう
できれば手術を避けたい。
本に載っていた癌に効くという薬、是非、試してみたい

すがれるものなら藁にもすがりたいと一週間後、病院を訪れた。
部長先生はお休みだった。看護師さんから


診断書は出せないけど、遠いところをやって来て、気の毒だから、診察だけは受けられるようにします

お言葉に甘えることにした。
しかし診察といっても一週間前に受けたばかりだ。
来院の目的を正直に言おうと思って診察室に入る。



Dr.は立ったまま、MRIの写真を見ていた。


あのぅ…診断書がほしいのですが…

診断書、どうするんですか!!
初めから詰問調だった。

職場に出そう…と思って…

なぜ、職場に出すんです!!

病気のこと…みんなに分かってもらおう…と思って…

職場に出すだけなら、手術後で、いいでは、ありませんか!!
取り付く島がなかった。それでも諦めず、今度は持ってきた本を見せ

できることなら…手術を受けたくないんです。それで…癌に効くというこの薬…飲みたいんですが…

Dr.は本を覗き込みながら


いい加減な本が多いんです。
誰が書いた本です?

表紙を見て著者が医師だと分かると


あなたは癌ではないんだから
そんな薬、飲んでも、効くわけないし、
変なもの飲んで、肝臓が悪くなっても知りませんよ!!
きのこは、カビの一種でしょ!!
手術が嫌だと言ってますが、
急に手術を受けたいって、やって来ても、
すぐには受けられないんですよ!!
頭ごなしに言われた。

自分から手術を受けたいなんて、やって来ませんよ。。。心の中で叫んだ。もうDr.に我慢できなかった。


髄膜腫は、女性ホルモンが原因なんですよね。
だったら、女性ホルモンが出ないようにすればいいんですね!!

Dr.も真顔で
ええ、そうです!!
頭に血が上りやすいのは、患者だけではなかった。

椅子に腰をかけることもなく、診察室を飛び出した。
診察室を出ると、中待合の患者が一斉に私を見た。
筒抜けだったのだ。恥ずかしさの余り視線を逸らすしかなかった。
そんな私を、外来の看護師さんが驚きと同情の入り混じった眼で見ていた。

悲しい気持ちで帰ってきた。夫は海外出張中だった。
医師が力になってくれないのなら、一人でなんとかしよう。

まず義母から、もらった百○芝に目をつける。
鮫には栄養血管を作らせない働きがあると知り、コンド○イチンも買う。これらを一緒に飲む。朝飲むと昼には微熱が出て体がだるくなった。これこそ温熱療法だと思って飲み続ける。


カナダに出張中の夫に報告すると
微熱の出るようなものは飲まないほうがいい
それであっさり止めた。熱しやすくて冷めやすいのかもしれない。


次は、舞茸。
毎日1パック、必ず食べた。これを1年ほど続けた。不安で胃腸の調子が悪い上に、きのこを食べていたから胃痛や下痢でどんどん痩せていった。この時、一生分の舞茸を食べてしまったらしい。もう舞茸は見たくもない。


+志向で暮らすことで、免疫力のアップもはかった。
インフルエンザには罹らなかったが、脳腫瘍への効き目はどうだったのだろう?


体力をつけようと、腕立て伏せをしたり腹筋を鍛えたり、できるだけ歩くようにした。

2000年3月2日
3度目のMRI
    ’00春      


MRIを受けた。腫瘍の退縮を期待したが変化はなかった。
観念して手術を受けることにした。手術の希望の日が決まったら、連絡してくださいと言われ、重い足取りで家に帰ってきた。

4月27日
受診


自分の仕事や家族のことを考え、手術は夏休みに受けることにした。

意を決して出かけたにもかかわらず事務的な説明で、あっという間に診察は終わってしまった。
Dr.に激しく抵抗した私は、部長先生に気丈だと思われていたのかもしれない。


手術が日常茶飯事の医師と、初めて手術を受ける患者とでは気持ちの上で大きなギャップがある。重大な決定をした患者にエールを送ってほしいと思うが、これって患者の甘えなのだろうか。