勇者ユリリンの英雄伝




───村は、ユリリンの出来るはずもない魔法もどきにより、壊滅した。───
そんなこんなで、ユリリンは村(廃墟)を後にした。
大魔王に、銀のチェーンロックの賠償金を払わせるため、ユリリンは、旅に出ることにしたのだ。
そして、すむ場所の無くなった眼鏡の少女アスカリアンも道案内人として、目つきのすこーし悪い少女ユリリンに同行することとなった。ユリリンにとっては下僕1という存在でしかないが……。
それはそうと、こうやって勇者としての第一歩は踏み出されたわけなのだが、ユリリンには一つの疑問があった。それは………アスカリアンは、道をしっているのかっ!?ということだ。
「こっちに本当に大魔王の所への近道があるわけ?」
ユリリンが疑わしそうに聞く。
そんなユリリンにアスカリアンは、にこやかに答える。
「こっちよ、こっち。絶対こっち!そうに違いないっ!」
「そうに違いないって、あんた……。」
秘かに不安になるユリリンであった。

「何か……言った?」
岩壁……つまり道の行き止まりのところで、ユリリンは半眼でアスカリアンを睨みながら言う。
「うん、言ったよ。」
「なんて言ったの?」
「絶対大魔王の所への近道だって言った。」
「ほほう……で、これは何?」
「これって?」
いかにもわざとやってるという笑みを見せるアスカリアン。
「ぶちぶち。……あんたねぇ!!ここっ……」
「行き止まりだって言いたいんでしょ。」
「………………。」
さらっと言うアスカリアンに、ユリリンは、いつか今までの中で最高の売値でアスカリアンを売り飛ばしてやろうと心に誓った。
「……いつまでもここにいたってしょうがない。さっきの道にもどろ……」
言いかけて、変な声と共に上を向くユリリン。そして───
「きいいいいやあああああああああぶっ!?」
「うにょわああああああああああおぶっ!?」
ごい〜ん。
ばたっ。
どさっ。
「なっ……何……今の……」
しかしアスカリアンの言葉に応える者はいなかった。ただただ、今起こったことを唖然と見ていたアスカリアン。側に転がる二体の死体。
「って、誰も死んどらんわい!」

必死に突っ込みながら起きあがるユリリン。
「今、私何も言ってなかったのに……。」
アスカリアンの言葉は、風に消える。

───とりあえず、上から振ってきた少女……
髪は黒色で、横に2つにくくり、いかにもどこかの村娘っぽい姿の少女を、起こすことにした。───
「おいっ!起きろ!」
べちべちべちべち。
「ゆっ、ユリリンっ!?顔はダメだよ!!」
いきなりユリリンが少女の顔を叩き出したので、慌てて止めに入るアスカリアン。
「でも、こいつ全然起きる気配ないんだけど……。」
「死んでるんじゃない?」
さらっと、かなり酷いことを言うアスカリアン。
だが、ユリリンが少女の顔をたたきまくったせいで、少女の村娘っぽい顔から蜂の巣、あるいはしもやけ状態と化したその顔は、もはやこの世の者とは思えないほど、変貌していた。
「…………?」
「どうしたの?」
「……うーむ、……今何かが聞こえたような……。」
「はい?」
ユリリンがわけの分からないことを言い出したので、思わず間の抜けたような声を出すアスカリアン。
「いやだって……ほら、また……。」
ユリリンついにいかれたかっ!?などという多少同情の混ざった眼差しで、ユリリンを見るアスカリアン。
「あんた、頭大丈ぶふっ!?」
「黙ってろ!」
“大丈夫?”そう、聞こうとした瞬間、ユリリンに殴られるアスカリアン。
『………ょぅー。」
「え?」
かすかにユリリンの耳に届く小さな声。
『ぅ……ょー。』
「はっ!?何?聞こえねぇーんだよっっ!」
『ムッキーは、ユキエルを起こせるんだよぉぉぉぉぉぉっ!』
次の瞬間、アスカリアンとユリリンは世にも奇妙なモノを見た────────





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