勇者ユリリンの英雄伝



天帝暦3541───
人々を恐怖で支配している者、すなわち大魔王が存在した。
大魔王キムにはむかう奴もいた。だが、大魔王キムの部下にことごとく破られた。
世はまさに暗黒時代と化した。
──────そんな中、大魔王キムの侵略からまぬがれた村があった。──────
その村の名は、『安松村』。けっして安い松阪牛のある村の略ではない。
安松村は今日も快晴であった。



「ねぇ、ユリリン。今日はどこへ行くの?」
黒く長い髪で眼鏡をかけた14,5歳ぐらいの少女は、同じく肩まで伸ばした黒い髪を後ろで束ねた少〜し目つきの悪い少女に声をかける。
「お前に言う義理はなっしんぐっ!」
この目つきの悪い少女こそこの物語の主人公なのである。
「ぶち。……もう、教えてってばv」
かなり不安定の笑みを見せる少女にユリリンはあきれたように言う。
「アスカリアン、そっっっっっっんなに知りたいわけ?
「うんっ!」
アスカリアン、と呼ばれた少女は即答する。
はぁぁ。
ユリリンがため息をつく。
「いくらで?」
「へっ?」
間の抜けたような声を出すアスカリアン。
「だーかーらー、いくら出すかって聞いてんのよ。今の世の中金でしょうv」
ぷっつん。
その瞬間、アスカリアンのこめかみが切れたような音がした。
「教えてっつってんでしょうがっっっっ!!!!!!!!!」
「ふぐばはっ!!!!!!??」
どがっ!ばききききききっ!!
ずずーん。
アスカリアンの放った右ストレートが見事に決まり吹き飛んだユリリンが次々に樹にぶつかる。倒れた樹は15,6本で、その音は村中に響き渡る。
「アスカリアン──────!!!何をやっちょるっ!?」
アスカリアン宅から出てきたおじいさんがアスカリアンに怒鳴る。
「じっぢぢい……って何で私だけ……て、はっ!?」
全然反省の色のない、アスカリアンの視線の先には、すでに小さくなりつつあるユリリンを捕らえた。
「逃げやがったな……あいつ……」


──────そんな毎日が続く中、ついに悲劇が起こった。──────


「モンスターだっっ!!!?」
ずぐんっ
「っはっ…………」
村人Aは、モンスターに胸を貫かれ、力なく倒れた。
モンスター達の攻撃で次々に村が炎上する中ユリリンは──────
「はっ、私の家にモンスターがッ!?」
「ユリリン落ち着いて!」
「だけど、家には親の形見がッ!?」
「でも……きゃあっ!?」
家に入ろうとするユリリンを慌てて止めようとするアスカリアンを突き飛ばし、家に飛び込むユリリン。
「あっ……」
家の中には、モンスターの手によって家ごとやけ焦がされた銀に輝くそれがあった。
「ああああああああああああああ────っ!?私の親の形見のチェーンロックがッ!?」
「何だそりゃああああああああっ!?」
思わず突っ込むアスカリアン。
「えっ、だから、自転車とかでよく番号合わせたらガチャッてなるやつあるじゃん。」
「んなもんわかっとる!!!って、世界違うじゃん!」
「ぅおのれ、モンスターめぇっっ!!」
キレるユリリン。それでも勇者かっ!?
「あんた、ムシしたでしょう。」
さらにムシするユリリン。
「くらえっ!!『南十字』(サザンクロス)特大ヴァージョン!!」
「ちょっとまてええええええ!?ユリリン魔法は使えないはずじゃあ……!?」
「やろうと思えば何でも出来──────るっ!」
「うそん。」
──────そして、頭上に落とされた超巨大十字架によって、村は壊滅した。──────




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