第四十九話で、バッタ、キリギリス、コオロギの大雑把な相違点を整理してみた。ここでいま少し詳しく見てみたい。それぞれに調べ得た範囲で羅列した。 | |
<バッタ類> バッタの鳴く仕組み 《ヒナバッタ類:脚を動かすたびに、後ろ脚の内側にある「トゲトゲ」が翅の脈とこすれあって音が出る。トノサマバッタ:後ろ脚腿節のスジと翅の脈の「トゲトゲ」をこする》 バッタには鳴かない種類も多い。 ※ ナキイナゴの雄はイネ科(ススキ、トダシバ)の葉の上で昼間よく鳴く。 |
ショウリョウバッタ;バッタ科。俗称キチキチバッタとも言われる。雄が飛ぶ時、キチキチと音が出る。体形はオンブバッタと似ている。 |
※ ショウリョウバッタの雄が飛ぶ時、「キチキチ・・・」と聴こえるのは、鳴くというより翅を動かす音である。体長は雌より雄の方がずっと小さい。蜘蛛にも雄が雌よりずっと小さい例が多い。 | |
キリギリス;キリギリス科。狸の食べ残した雑魚(肉食)を喰っているところ。ギー、チョンと鳴く。 |
※ バッタ類の殆んどは卵越冬であるが、ツチイナゴは成虫で越冬する。 <キリギリス類> キリギリスの鳴く仕組み 《左右の前翅の重なり合った部分がこすれて音が出る》 上翅(下部)のギザギザ部分(ヤスリ)と下翅(上部)の硬い部分(マサツ片)がこすれ、その音が幕(発音鏡)を振動させて響く。 ※ 腹端に長い産卵管があるのが雌であるが、雌はまったく鳴かない。 |
※ クツワムシ、スズムシなどは低木のある草むらに棲んである。 | |
※ ヤブキリやキリギリスは肉食性と言っても、若い幼虫時代は柔らかい植物を食べている。肉食性のものは前脚と中脚に獲物を押さえ易いように長いトゲがある。草食性のもの(ツユムシ、クツワムシ)は長いトゲはない。ツユムシは大きくなっても植物(草食性)を食べている。 ※ クサキリ、キリギリスなどの孵化したばかりの幼虫は、花粉などを喰っている(4月頃)。花をあらす虫は花粉や花びら等を喰っているわけであるが、花粉を喰うことは受粉の仲立ちをしていることでもある。 |
ススキ上でカマキリが獲物を探している。二つの鎌を持ち上げて祈っているような姿勢は、獲物捕獲の準備行動である、とか。 |
<コオロギ類> |
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※ コオロギは泳げるようで水に強く、水中に潜ってかくれるもの(ツヅレサセコオロギ)もいる、という。 ※ カマドコオロギのように家屋内に観られるものから、アオマツムシのような樹上生活をするものなどがいる。 ※ バッタ類のように、卵胞して保護することはしないようだ。 <その他>
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※ 因みにセミは腹で鳴く。腹にある発音筋を動かして、発音版を振動させる。その振動が腹の共鳴室に伝わって大きな音(鳴き声)となる。 | |
一筆余談になるが、世界大百科事典にこのような記事があった。「・・・《万葉集》には今日のコオロギをコオロギとよんだ歌が数種ある。当時のキリギリスは今日のキリギリスと同じであった。《古今集》で今日のコオロギがキリギリスと誤ってよまれ、それが芭蕉の俳句まで続いた。今日のキリギリスが正しくキリギリスに訂正されたのは、一茶の俳句や川柳の時代になってからである・・・」と。 さて七月、樹間からニイニイゼミやヒグラシたちが、本格的な夏の訪れを告げれば間もなく、キリギリスたちが唄い出す。 |
オナガササキリ;キリギリス科。この長い触角には驚かされろ。昼間、夜ともに、ジイッ、ジイッと鳴く。 |
八月ともなれば、昼はキリギリス、夜はコオロギが登場してくる。やがて九月、「我こそは・・・」と鳴く虫たちが出揃い、秋の夜長を鳴き通す。 | |
アオマツムシ;コオロギ科。樹上に棲息する。鳴き声はチリチリチリとするどく樹上の方より聴こえてくる。 |
加えて伊賀には、古(いにしえ)を語る諸々の地方豪族(土豪)の城址がそこここに点在している。歴史的に由緒ある地域でもある。
“尚今も 松虫鳴くや 城の址” |
かかる観点からしても日本の自然の素晴らしさ、重宝さをひしひしと感じるのである。誇りでもある。そればかりではない、世界中で一番平和な国でもある。実に有り難いことだ。 |
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