「ホ〜ホ〜ホ〜タルこい〜、こっちのみ〜ずはあ〜まいぞ〜」と口ずさんでから六十年、その名前だけはよく知っている。 |
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しかし唯それだけのこと。どれほどの種類のホタルがどれくらいいるのか全く知らないまま・・・。最初に名前を知ったのは、おそらく幼少の頃聞き覚えたわらべ歌からだと思われる。 ホタルと言えばゲンジボタル・・・、せいぜいヘイケボタルというのもいるらしい、程度の知識だった。里山に来てホタルと接し、本を読んだりしてみて、ホタルにもたくさんの種類のいることを知った。 |
ヘイケボタル;前胸の黒縦条線が I 形である。体長、7〜10mm。夜行性。 |
ホタルは「火垂る」とか「星垂る」といった自然情景の描写からそう名付けられた、という。 | |
ゲンジボタル;ヘイケボタルが I 形であるのに対して、十字形であるのがよく分かる。体長、12〜18mm。夜行性。 |
一般にホタルと言えばゲンジボタルを指す場合が多い。日本固有種であるばかりでなく大型で光も強い。まことに誇らしい存在である。ところが国内に何十種類もいることは意外に知られていない。ましてや天然記念物として?・・・。 源氏とくれば当然のように平家が思い出される。ヘイケボタルはゲンジボタルよりも小さく、前胸の黒縦条線が太く、I 字形である。ゲンジボタルはそれが十字形で、区別できて分かり易い。 |
成虫の出現時季も多少遅く、幼虫は汚水に強く水田にも棲む。 | |
幼虫が弱い光を発することから、ウジボタルと俗称されている地方もあるとか。ゲンジボタルに対し、小形で貧弱に見えるのでヘイケボタルと呼ばれるようになったらしい。 又国内にとどまらずホタル類は世界各地に分布していて、特に熱帯地域に種類(約2000種)が多い。各地、各島にそれぞれ固有のホタルが棲息している、と同本(ホタルの飼い方と観察)に書かれている。 |
クロマドボタルの幼虫;庭で偶然見つけた。成虫はまだよう見つけていない。成虫体長、9〜11mm。発光しない。 |
さらに「現在日本列島には、44種のホタルが記録されていますが、成虫がよく発光するのは14種で、このなかにはメスだけが強く発光するものが数種含まれています。・・・全国で10ヵ所が国の天然記念物に指定されています」とある。 | |
オバボタル;ヒゲのかたちが違っている。山地にいる、昼行性。体長、7〜12mm。 |
且つ万有百科大事典に「幼虫が陸生の種類には上の2種(ゲンジボタル、ヘイケボタル)に似た色合いと体形のものに山林に産するヒメボタルがあり、雌は体が太く、後ろばねがない。体の平たい種類にはクロマドボタル、オオマドボタル、発光しないオバボタル、オオオバボタルなどがあるが、対馬には大形で体が黄色く上ばねだけ黒いアキマドボタルが秋現われ、雌は幼虫形である」と、出ている。ホタルならすべてが光るというものでもないわけだ。全体の約1/3ぐらいだそうである。 |
全く光らないものもあれば、オバボタルのように、幼虫時代に光っていて、成虫になると光らないものもあることを教えられた。 | |
よく気をつけて観れば、それらのいくつかの他種も場所場所で身近に見つけることが出来る。わが裏庭でもオバボタル、クロマドボタル、ヘイケボタルを偶然見つけることが出来た。その気になって観察したからであろうか。地べたを這うヘイケボタルなどは、指先で摘み上げるのに一苦労するほどの小ささだ。あれこれいろいろと直に接することの出来る環境、伊賀(名張)の自然の豊かさ有り難さをしみじみと感じているところである。その場所場所で、いろいろのパターンの固有種が存在しているようだ。 |
ゲンジボタルの棲息地、きれいな水辺(奈垣)。 |
それぞれの環境にそれぞれが適合して生きている、と言える。 | |
当然環境破壊のあおりを食って絶滅しかかっている種もある一方で、まだまだ新種発見も充分あり得る状況ではある、と信じたい。 名前は知っていたがその生態までは知らなかった。何一つ十分な事を知らなかった人間に、その気で観れば大自然は沢山のことを教えてくれる。 “闇夜にも 星垂るホタルで 癒される” |
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