かのんのキョロキョロ日記

    よべのつき二〇〇六 ― 芭蕉祭 ―

     


             

    2006.10.12

     

     

    「どうする?今年も行く?」

    「いくにきまってるでしょ!!♪」

     

    月の頃、いつも一緒に出かける娘と張り切って予定を立てたものの、

    イッテンニワカニカキクモリ・・・・となったのは我々の体の中。

    母子で熱と咳と鼻水鼻詰まりのフルコース。

     

    「こらあかんわ」

     

    というわけで、今年の十五夜は薪能鑑賞は断念して自宅にて観月。

    出かけられないのはつまらないのでいただいた栗でお菓子を作ってみたり、

    買ってきた月見団子を食べたり。

     

     

     

     

     

     

    月が欠けるにつれ少しずつ体調もよくなった。折りしも十二日、伊賀上野は芭蕉祭。

    「ずるーい!」と不機嫌な娘を学校に送り出し出発。

     

     

     

     

      

     

     

     

    芭蕉翁は正保元年、伊賀国に生まれ、(中略)元禄七年十月十二日、大阪御堂筋の

    花屋において逝去。(略しすぎ?)

    享年五十一歳であったとあちこちに記されている。

    毎年しぐれ忌の十月十二日に催される『芭蕉祭』は今年で六十回目とのこと。

    (もちろん、十月十二日は旧暦でありましょうが、それは芭蕉翁もお許しいただくの

    ではないだろうか。)

    朝から法要があり、故郷塚や芭蕉像、文学碑への献花、献菓、献茶。

    その後伊賀上野城俳聖殿にて芭蕉さんの歌の斉唱や献花や献詠句の額の奉納、

    献詠俳句・連句、芭蕉祭ポスター、絵手紙の授賞など、いつもは閉じている

    俳聖殿の今日は開かれた扉の前でどんどんどんとプログラムは進行。

    献詠俳句やポスターは子供の受賞者も多いので、あたりはにぎやか。

    胸の紅白のリボンの誇らしげなこと。

     

     

       小鳥来る俳聖殿のつむりにも

     

       どんぐりの小さき拳にあまりをり

     

       じいちやんの手のひらに置く柞の実

     

       そのかみは草鞋の踏みし木の実かな

     

     

     

     

     

     

     

    来賓の祝辞、合唱にて式典は無事終了。

    準備されている菊を俳聖殿の芭蕉像に献花。

     

     

       松籟や俳聖殿に一礼す

     

     

     

     

     

    このあとは協賛行事として野外音楽会や史跡めぐり、ハイキングもありますとの

    案内のリーフレットも受け取ったが、やはりここは全国俳句大会へ。

    お城の広場では古物商が店を広げ、日向ぼこ。

    花を眺め、景色を眺め、古物商とおしゃべりをしつつ、ああ、手帳は空白。

    楽しいけど困るやんか。

     

     

       秋深し大き蟻曳く小さき蟻

     

       紅葉且つ散る顎鬚の古物商

     

     

      

     

       

     

     

     

    上野城から徒歩10分ほどの会場へ移動し、あたふたと三句投句。

    約百人の参加で、三百句ほどの中から互選は一人二句。

    選者としていらしたのは宮田正和氏・茨木和生氏・塩田薮柑子氏・稲岡長氏・

    岡崎光魚氏で、選者の皆様は二十ほどの入選と三句の特選の枠を持っているとのこと。

     

    前のほうの椅子がガラガラだったので、「前に詰めてもらえる?」とお世話役の方。

    それならばと私が座ったのは茨木和生氏の前。それも一番前。

    以前吉野でお目にかかったことがあることと、インターネット句会からの

    つながりもありしばしお喋り。

    そして、突然先日上梓された句集『畳薦』をいただいたり。

    句会は互選はあったものの、選者特選には入らず、つまりは賞品にあたらず手ぶら・・・

    ではなく、きっちりとご本を胸に抱いて帰った、またもや運のいい私。

     

     

     

    徒歩で訪ふ土芳が庵翁の忌

     

     

    今年は雨がちで、月の顔を眺めるのもなかなかのですが、そのなかなかのあわいに

    ちらとのぞく月の白い光がことさら嬉しい、二〇〇六年の秋、月の秋です。

     

     

       月影ろふ御仏の手のくぼみほど

     

     

     

    2006.10.12  Photo / 文 / 句: 坂石佳音

     

     

     

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