よべのつき 二〇〇五
【 葉 月 】
朔日 新月や膝折り受くるささめごと
二日 台風来糸屑の月からめつゝ
三日 三日の月うすももいろの犬の鼻
四日 四日繊月空揺する小さき蜘蛛
五日 朱鷺色の天の水面の五日月
六日 六日月体操服に胸ポッケ
七日 夕月や半切桶にゐる金魚
八日 霽月や小さきを放る小さき犬
月の夕星の夜二百二十日かな
九日 ちちと鉄瓶東に夕半月
十日 梅田すてんしょ半月の見え隠れ
十一日
時折は月負ひゐたるいとどかな
十二日 月地に触るゝ真赭の野かきわけて
十三日 五位鷺教授おつむりに月の冠
母と娘の枕並べて月の宿
十四日 唱歌うたひて待宵の子と母と
十五日 望の夜のしばし眺むる寝息かな
十六日 月いさよひ厨のほのほなつかしき
十七日 立待の月無し皿に金平糖
十八日
居待月眠られぬ子を撫でゐたり
十九日 羽化シタクツテヨコタハル月ノマヘ
二十日 六百のてるてる坊主夜半に月
二十一日 三七の月坂登るエンジン音
二十二日 片割月髪まだ濡れてゐたりけり
二十三日 宵闇や初めて料る白き茸
月待つや魑魅魍魎に添ひ寝させ
二十四日 月雲ゐコーヒーミルに小抽斗
鶏頭を選りて零るゝ月の雨
二十五日 有明の窓慕ひゐる秋の蝿
二十六日 カチコチとめいめいにいま朝月夜
二十七日 真夜の月けふは何れの懐に
二十八日 有明月てふてふゆつくりゆつくり覚む
二十九日 なんばんぎせるほら朝がやつてきた
【 長月 朔日 】
たまきはる色無き月の曠野かな
【 長月十三夜 月拾遺 】
十三夜ましらのゐざるけはひかな
唐墨やまだ出でぬ月待つてゐる
十三夜旅の数ある土の笛
月の雨湯加減をみる父の肘
十三夜やはらかく咲く赤子の手
十三夜笑ふ顔ある石の壁
十三夜日付変更線に波
カチコチカチコチ − 佳音 −
繊月が空をゆく
壁の時計、
机の時計、
枕元に時計、
台所に時計、
洗面所に時計、
居間に時計、
時計、時計、時計
かちこちかちこち
わたしのとけいはまだ海の中
そろそろ渚に届く頃
あなたのとけいは
いまなんじ。
いまなんじ − 海月 −
いまなんじ
あなたは聞いた
ぼくは
10時だよと応えた
いまなんじ
あなたは聞いた
もう夜中の3時だよ
ぼくは
とんがって応えた
忘れることが多くなり
でも 忘れられないことの一つや二つはある
無題 − くりおね −
秋だねぇ
徐々に秋になるんだったらいいんだけど
急にやってくるんだよね
びっくりして胸がいっぱいになる
目が覚めて増俳でしんみり
ぎふうさんちであおられ
そしてこんどは
くらげさんにたまげてしまったよ
すっかり秋になってしまって
もう逃れられないね
>゜))))彡 >゜))))彡
雲流る後の月待つ眼の底に
荒波の底の月夜でありにけり
>゜))))彡 ありがとうございます、海月さま、くりおねさま >゜))))彡
Photo / 句: 坂石佳音
2005.Nov