かのんのキョロキョロ日記
よべのつき二〇〇五 ― 上野城観月薪能 ―
2005.9.18 十五夜
「どうする?今年も行く?」
「いくにきまってるでしょ!!♪」
というわけで今年も娘と二人、上野城の観月薪能に行って参りました。
今年はお城にのぼりたいというのでちょっと早めに出かけて、天守閣までのぼり、
開演は18時だったのですが17時には本丸広場に入っていました。
なんといっても「口に入れるものの誘惑」に弱い私たち。一時間もあればあれこれと。
今日は空がきれい、昨年は月は見えず、少し雨もぱらついていたのですが、今年はその心配は
ありませんでした。
私も娘(小学四年生)と一緒でしたが、小さな子供からお年寄りまで幅広い年齢の人々が
開演を待っています。もちろん日本人以外の方々も。伊賀牛串焼きの露天では、
「well-done」
「うえるだんっちゅうたらよう焼けてるのやなぁ、んー・・・これや!!」
というやりとりも。
娘も「フライドポテトが詰め放題だった」と嬉しそうでした。
ぎこちなくつかふ黒文字秋うらら
秋高し胡座の中に小さき足
18時、まだ明るい中火入れ、挨拶。
そして開演です。
秋あふぎ月待つ心あまたかな
今年は暑いので、私たちも扇を持っていました。団扇を持っている方も多く、それぞれ
ぱたぱたぱた。
金春流能『田村』、大藏流狂言『文山立』、観世流能『海人』、さていかにあらすじを
(先ずは自分が理解して)娘に伝えよう・・・と、リーフレットを見ながらひととおり
説明。あとは野となれ山となれ。
月白や清水寺の縁起など
秋気澄む花の扇の舞ひ舞ひて
名月や鬼神退治のシテの舞
山賊のいのちをしみや月晧々
昨年はまったく月の無い観月の宴でしたが、今年はまんなるな月が東の空にそろりとのぼり
一緒に舞台を眺めていました。
ここ数年は十五夜と満月がちょうど同じタイミングになっています。
来年はちょっとずれてしまうそうなので、十五夜にまんまるの月は今年でしばらくおわかれの
ようです。
しかし、どんな形をしていても月は月、大好きな月に変わりは無いのですが。
秋蝉のまどひ飛びゆく月のまへ
天候にも恵まれ、全ての演目が終わりました。
私たちはいつものように川沿いの道を車で家へ。今年はいつものところに白鷺がいるだろうか、
そんなことを話しながら。
車のヘッドライトを落としてもきっと運転できる、そんな明るい夜の川辺の茂りには
今年も無数の白い星のように白鷺が眠っていました。
帰宅してもう一度外へ。
娘に「どうだった?」と問えば「すごくおもしろかった♪」と。
「おはなし、わかった?」と問い直せば「ううん、ぜーんぜん♪♪」んー、やはり野のまま山のまま(?)
でも楽しかったのならいいかな。
地には虫の声、天には月と遠慮を知らない赤い星がひとつ。
名月や五分の虫にも影法師
こうして今年も無事に秋を迎えることが出来ました。
かのんのキョロキョロ日記、上野城観月薪能(2005)編でした。
2005.9.18 Photo / 文 / 句: 坂石佳音