月見れば

 

「かのんさんも見てるかなあ」

【 名月の秋 特別企画 『月見れば』 】

坂石佳音

 

☆彡 つぶやく堂( 2002.9.5 2002.10.7

    【 名月の秋 特別企画 『月見れば』 】 05 Sep (Thu) 17:33 

    ◆万葉集 巻第十八
    月見れば 同じ国なり 山こそば 君があたりを 隔てたりけれ (大伴池主)

      月はみんなをみる
      みんなも月を見る
      山が隠しているけれど
      同じ地球に住んでるよ    かのん

    秋です、名月です。9月7日は旧暦の葉月朔日。そして9月21日の仲秋です。
    きれいでしょうね・・・月。

           秋乾き月に夜伽をしてみたし    佳音

    昨日の月を今日に詠むの30日間、『月見れば』です。
    のんびりお月見、みなさまどうぞご一緒に・・・

     ☆彡文月名残
          月読と肩並べゆく花野人:かのん
          旅の空見えぬ月なぞ訪へば風:かのん
          旅の空月見えぬともあすは朔:葉山
          遠吠えや月の滴を撥ねてくる:や

    しばし文月名残です、9月8日に前夜の八月朔日を(^.^)

    追伸 : うー、こっそりひそかにそーっとやろうとおもってたのに・・・
          みんな(だれや)だいっきらいだー(う・そ)←クスクス

     

    かのんの月読命のおはなし、おまけ 05 Sep (Thu) 17:55 

    ある日、天照大神がいいました、保食神(ウケモチノカミ)のところに行ってらっしゃい、と。
    月読命は保食神のおもてなしを受けましたが、その食物は保食神の口から吐き出されたものでありました。
    怒った月読命は保食神を打ち殺してしまったのです・・・でもそのことにより、保食神の亡骸からたくさんの穀物や植物の種がとれたのでした。
    また、月読命のおさめる夜の国は死者の国でもあります。
    花野をぬけて、常世の国へ。月の光あびて。

     

    『月見れば』準備 06 Sep (Fri) 19:22 

    今夜は文月晦日、
    今夜はこの空に月はいないのです。だって、今朝3時58分にのぼって、18時にしずみましたから。
    今はかなた昨日の国の空にいます。
    わたしは明日朝、文月晦日の月をアップします。
    おやすみなさい(^.^) 早すぎ??

    『月見れば』零 07 Sep (Sat) 05:10 

    文月晦日

    消息を絶てり晦日の夜半の月   佳音


     (花さん製作)

     

    『月見れば』一夜 08 Sep (Sun) 05:27 

    八月朔日

    在るといふそれだけでよし朔の月   佳音

    『月見れば』二夜 09 Sep (Mon) 10:16 

    葉月二日

    猫の髭こぼれてふわり二日月   佳音

       夕刻、西の地平に糸のように細く、細く。

    『月見れば』三夜 10 Sep (Tue) 10:37 

    葉月三日

    初月や鋏ためらふ嬰の爪   佳音

       昨夕、日暮れ前の西の空には、やわらかそうで、しっかり
       しているようで、切ったら落ちる途中でとけてなくなりそう。
       そんな月がゐました。

    『月見れば』四夜 11 Sep (Wed) 08:44 

    葉月四日

    眉月や化粧了へたるくすり指   佳音

      化粧は「けはひ」了へるは「をへる」
      太くもなく、細くもなく、若月の、繊月の、やわらかな曲線。
      紅を小指でととのえて、眉を薬指でなぞればできあがり。
      振り向いて、にっこりわらいませう。

     (花さん製作)

    『月見れば』五夜 12 Sep (Thu) 10:10 

    葉月五日

    威銃月の兎もねぶたかろ   佳音

       威銃(おどしづつ)は獣から畑を守るために響きます。
         「どーん」…
         「どーん」…
         「どーん」…
       薄闇に遠く低く。まどろみに忍び込んで夜は更けてゆきます。 (花さん製作)

    『月見れば』六夜 13 Sep (Fri) 09:55 

    葉月六日

    辻占の背中すべりゆく月の舟   佳音

      辻占って辻の占師かと思ったら、四辻に立ち、初めに通った
      人の言葉を聞いて物事の吉凶を判断する占いのことでした。
      降ってくる言葉を待つあたり、誰かに似ている。クスクス

    だんだん月が夜のものになりますね。

    『月見れば』ひとあそび 13 Sep (Fri) 16:00 

    昨年のこと

    秋のやさしい夕焼雲を見ていました。
    ふりむけば、半月になりきれない月が、
    西日を受けて淡い珊瑚色になった雲の間にぽかり。

    「あ、カメラ・・・」

    と思いつつもそのまま見とれていたら、左から月に向かう飛行機あり。
    来る・・・来る・・・、
    ぜったい月の後ろになんて入るわけはないのに、
    ドキドキしてしまうのはナゼ?

    見事に月に重なり通り過ぎたその絵はこの眼の中にあるのに、
    出力する術が無いのでした。

       雲を曳きゆくものありき月の前   佳音

    『月見れば』七夜 14 Sep (Sat) 08:36 

    葉月七日

    月の弓夢見わろしと方違へ   佳音

      ああ、曇り空。とうとう物忌なると雲の中。
      方違えして出直ししてね、月。


      今夜は半月です。

    『月見れば』八夜 15 Sep (Sun) 09:32 

    葉月八日

    偃月を雲にあづけて早寝かな   佳音

      曇っていても、雨でも、きっとこの上にいるよ。
      そうだね。
      しかし、雲に月を預けなくとも、わたしは早寝です。

    『月見れば』九夜 16 Sep (Mon) 10:00 

    葉月九日

    盈月や人目を糧に巷柿   佳音

      「早く芽を出せ」ならぬ、早ク太レヨアヲキ柿。
      ただし、柿木の根元は他所のお庭の中です。
      でも、早く太れよ・・・

    『月見れば』ふたあそび 16 Sep (Mon) 17:58 

    午後、イッテンニワカニカキクモリ大粒ノニワカ雨。

    あめがどうろで
    とまとのはっぱみたいにはねてるよ
    ばちゃ、ばちゃ、ばちゃ
    みんなであそんでるの
    ・・・こーずいになりそうだね    ひでこ

    それはね、

       月ノ座ヲ洗フ真昼ノ天ノ湯屋   佳音

    夜になる前に晴れるといいね。

    『月見れば』十夜 17 Sep (Tue) 09:08 

    葉月十日

    十日夜真赭の影の身じろがず   佳音

      十日夜(とうかんや)風のない夜。
      虫の声がまだ赤い薄の根元から響く夜でした。

    『月見れば』十一夜 18 Sep (Wed) 09:38 

    葉月十一日

    霽月の聲に目覚めむ狐花   佳音

      霽月(せいげつ)は雨上がりの月。
      呼んでいる、呼んでいる、出ておいで・・・
      ほら、彼岸花の芽がつんつんと角を出す。
      秋の夜のヒミツです。

    『月見れば』十二夜 19 Sep (Thu) 11:34 

    葉月十二日

    皓月や尾まで隙なし秋の蛇   佳音

      晧々と照る月、まだ満月には幾日かありますが、
      月の光で影の伸びる宵です。

    『月見れば』十三夜 20 Sep (Fri) 09:55 

    葉月十三日

    天地反して月の沁む刈田かな   佳音

      稲刈りの後、切株が残っているところにも、
      掘り起こして黒々とした土をのぞかせているところにも、
      白いやわらかな光がふりそそいでいます。
      どうか来年もよいお米が育ちますように。
      瑞穂の国の月夜です。

    『月見れば』十四夜 20 Sep (Fri) 22:17 

    葉月十四日

    月晧々手のひらを裂く運命線   佳音

      明るくて、手のひらを見つめれば本当が見えそう。
      小望と望のすきまから。

    小望月誰に読ませむ草のふみ   佳音

    待宵やきこえますかと問ふてみる   佳音

      月の光の中なら草仮名もうまく書けるでしょうか。
      それよりもあの雲、おねがい、どうか邪魔をしないで。
      わたしの声はとどいていますか、遠い遠い空に。

    (顎オッサンさん製作)

    『月見れば』十五夜  22 Sep (Sun) 10:35 

    葉月十五日

      昨夜は仲秋の名月を愛でむと伊賀上野城の薪能に行って
      まいりました。
      毎年、仲秋に篝火に火をともすこと18回目という催しです。
      今回は『高砂』にはじまり、観世流・能 『小督』、
      大蔵流・狂言『呼声』、金春流・能『舟弁慶』と、夕刻
      日は落ちて暗くなるも、月は今だ東にためらう頃に火入れ、
      やがて宴たけなわに、やや雲居ながら月も昇り、集いたるもの皆
      良宵を堪能しました。

             (かのん)


    火を入れて観月の宴はじまれリ
    能舞台篝火に月目覚むなり
    薪能扇のつむぐ良夜かな
    良宵やどかと歩めり太郎冠者
    田楽と酒の宵なり三五月
    月天心焔残して宴果てぬ
    客人の一人にひとつ供の月

      見え隠れしながら、ついてくる大きな月と一緒に帰りました。

      さて、夜半に鄙の里にて一人見る月は、先ほどまでのよそよそしさ
      は何処?のやさしげな面差し。
      さあ、わたしの月、お願いよ、とどけてね。

    天も地も君にあづけて良夜かな
    身ほとりに猫は空寝の望の夜

      雲の切れ間の月とわたしのささめごとでした。       佳音

    『月見れば』みあそび   22 Sep (Sun) 19:31 

    今年は仲秋葉月十五日(9月21日)が満月でした。
    しかし、昨年のように葉月十六日が月としては望(もち)となる年もあります。

     今宵十六夜なれど望の月なり

        十六夜の名をもつ月や汝に問はむ
              満ちみちてのち欠ける寂しさ

              平成十三年 葉月十六日(10月2日)  紅

    『月見れば』十六夜   23 Sep (Mon) 08:55 

    葉月十六日

    十六夜や動かぬ虫の多きこと   佳音

      満ちて後は欠けるのみ。
      しかし美しいものは美しい。
      でも…

    月十六夜雲の庵にこもりけり    佳音

    尼君は雲の中。
    噂をしていると顔をのぞかせたり、すこし眠たげなお顔です。

    『月見れば』葉月十七夜   24 Sep (Tue) 09:57 

    葉月十七日

    立待や子にただいまを教えられ   佳音

      月が見えたり見えなかったりの宵。

      暗くてもシルエットでその人だとわかる…というのはわかる。
      大好きな人はことに。

    『月見れば』十八夜     25 Sep (Wed) 09:26 

    葉月十八日

    月居待男子半とココア吹く   佳音

      君はこれからどれだけの人に出会うのだろう。
      あたたかいものを一緒に飲むのだろう。
      今、この時も君の人生のかけら。
      すぐにこぼれて見えなくなってしまうけれど、
      ・・・・
      それで、いい。

              (男:をのこ、男子:をのこご)

    『月見れば』十九夜     26 Sep (Thu) 09:47 

    葉月十九日

    臥待やたれにもひとつされかうべ   佳音

      青い青い空は、深い深い夜に着替えて月を抱いています。
      空の胸元に頬をよせ瞑る白い月。
      静かすぎてこわい。
      こわいって、なぁに?

      月やはものを思はする、ことにこんな宵は。

    『月見れば』二十夜    27 Sep (Fri) 10:12 

    葉月二十日

    月雲居亥中の栞二度三度   佳音

      更待ちの宵。でも、ああ、今宵は雲が厚すぎます。
      無理よね、ゼッタイ。
      でも気になるの、あきらめの悪い女です。

    『月見れば』二十一夜    28 Sep (Sat) 09:59 

    葉月二十一日

    宵闇の果つることなし雨催ひ   佳音

      もう月が出ている時刻、見えないのは雨が降りそうだから?
      いえいえ、これは宵闇。

    掌に降る闇も美し月無き夜   佳音

      降りそそぐ美しい闇を掌(たなうら)に受けて、月は無くとも月の宴。
      さあ、一献。

    『月見れば』二十二夜    29 Sep (Sun) 08:08 

    葉月二十二日

    月代に東を知る旅の窓   佳音

    湯の中なら尚よし。
    眠る前になじみの月とご挨拶。

    『月見れば』二十三夜     30 Sep (Mon) 09:46

    葉月二十三日

    シグナルは明滅二十三夜月   佳音

      ちょっと夜更かし、ますます夜更かし。

    『月見れば』二十四夜     01 Oct (Tue) 11:11 

    葉月二十四日

    有明けや落つれど醒めじ花のゑひ   佳音

      ほたり、ほたりと
      そしてもう新しい花。
      月は白、花は無垢。

    『月見れば』二十五夜      02 Oct (Wed) 09:47 

    葉月二十五日

    光る星光らずも星大銀河   佳音

      台風が駆け足で通り過ぎ、洗いたての空。

    台風一過子の寝息月と見ゆ   佳音

    『月見れば』二十六夜     03 Oct (Thu) 10:43 

    葉月二十六日

    名も知らず恋それもよし星月夜   佳音

    約束もせず
    有明の月の舟     佳音

      寅の刻、空を訪ふ
      星にまどろむ舟あり
      銀漢の藍に問ふ
      そは戀めやも?

    『月見れば』二十七夜      04 Oct (Fri) 10:23 

    葉月二十七日

    正眼に構へて月と朝稽古   佳音

      昨日は4時半今朝は5時起床、そして月に逢ふ。
      同じ高さにて迎へられ候。
      されど、

    喰らふほどやつれ繊月星の蝕   佳音

      明日も勝負でござる。むむ、「おぬし起きられるかのぅ」とな?
      失礼千万!!とは申せ、まことにあやしきかぎりぃ・・・・。

    『月見れば』二十八夜    05 Oct (Sat) 10:03 

    葉月二十八日     

    残り月鉄道員靄を掃ひけり   佳音

      今朝も日の出前の朝五時に東の空を見て、
      新聞がポストにもぐりこむ音を聞きました。
      ♪あっさいっちばんはっやいのは?
      パン屋さん、牛乳屋さん、新聞屋さん、そしてぽっぽやさん。
      始発電車、ぴりりりりり・・・、顔は洗った?

    『月見れば』二十九夜    06 Oct (Sun) 10:06 

    葉月晦日

    朝月やよんべ生まれの大あくび   佳音

      生まれたてのものが一番大きなエネルギーをもっている。
      ほらほら、そんなに大きなお口、あふれているよ、
      命の煌きが。

    『月見れば』三十夜    07 Oct (Mon) 09:53 

    長月朔日

      月の詠み仕舞は雨でした。
      もう長月の新月です。
      太陽とほぼ同時に姿を見せて、そのために見えない月。
      でも、雨の向こう、雲の上に確かに在る月。
      30日もの長い間追いかけさせてくれてありがとう。
      長い間?いいえ、私は楽しかったからほんの瞬きの間。

    月見ればちぢに物こそ悲しけれ 我が身ひとつの秋にあらねど (大江千里)

     月を見ていると
     何もかもが悲しくて
     わたしひとりを泣かせるために
     秋が在るわけじゃないのにね       かのん


      さびしい、でも
      また、ここからはじまる。
      これからも見守っていてね、これからも見つめています。
      月。


    瞑れば月の菩薩の坐す空   佳音

               (『月見れば』全三十夜 2002.10.7 サア、マドヲシメマショウ)

     

秋の月の夜です
まだ冷えていないですか