月見れば

 

月見れば

【 名月の秋 特別企画 『月見れば』 】

坂石佳音

2002・9・5発〜・2002・10・7了

 ☆彡 ごあいさつ

秋乾き月に夜伽をしてみたし

☆彡 文月名残

月読と肩並べゆく花野人:佳音
旅の空見えぬ月なぞ訪へば風:佳音
旅の空月見えぬともあすは朔:葉山
遠吠えや月の滴を撥ねてくる:やんま

☆彡 月見れば

消息を絶てり晦日の夜半の月
在るといふそれだけでよし朔の月
猫の髭こぼれてふわり二日月
初月や鋏ためらふ嬰の爪
眉月や化粧了へたるくすり指
威銃月の兎もねぶたかろ
雲を曳きゆくものありき月のまへ
辻占の背中すべりゆく月の舟
月の弓夢見わろしと方違へ
偃月を雲にあづけて早寝かな
盈月や人目を糧に巷柿
月ノ座ヲ洗フ真昼ノ天ノ湯屋
十日夜真赭の影の身じろがず
霽月の聲に目覚めむ狐花
皓月や尾まで隙なし秋の蛇
天地反して月の沁む刈田かな
月晧々手のひらを裂く運命線
小望月誰に読ませむ草のふみ
待宵やきこえますかと問ふてみる
火を入れて観月の宴はじまれり
能舞台篝火に月目覚むなり
薪能扇のつむぐ良夜かな
良宵やどかと歩めり太郎冠者
田楽と酒の宵なり三五月

客人の訛やさしき良夜かな
月天心焔残して宴果てぬ
客人の一人にひとつ供の月
天も地も君にあづけて良夜かな
身ほとりに猫は空寝の望の夜

ドームの夜白球月になりそこね

十六夜や榾ゐのこりし城の土
十六夜や動かぬ虫の多きこと
月十六夜雲の庵にこもりけり
立待や子にただいまを教えられ
月居待男子半とココア吹く
臥待やたれにもひとつされかうべ
月雲居亥中の栞二度三度
宵闇の果つることなし雨催ひ
掌に降る闇も美し月無き夜
月代に東を知る旅の窓
シグナルは明滅二十三夜月
有明けや落つれど醒めじ花のゑひ
光る星光らずも星大銀河
台風一過子の寝息月と見ゆ
名も知らず恋それもよし星月夜
約束もせず有明の月の舟

神も爪切る二十七夜の残り月
正眼に構へて月と朝稽古
喰らふほどやつれ繊月星の蝕

残り月鉄道員靄を掃ひけり
朝月やよんべ生まれの大あくび
瞑れば月の菩薩の坐す空

    

 

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