里山へ



西宮船坂ビエンナーレ

里山みらいじゅく


 


2010年10月

 



いよいよ『里山みらいじゅく』。ひでこも誘って申し込んだので。

二人で出発。電車を乗り気乗り換え到着した駅はホームから琵琶湖が見えた。

マイクロバスで会場の棚田まで送っていただく。

町を抜け、景色が変わった頃、ひでこがぽつりと

「家に帰るみたいねぇ。」とつぶやいた。

 

 

 

  

  

 

  

 

 

 

 

今森光彦氏は仰木の棚田を歩きながらひとつひとつ丁寧にその自然を

紹介してくださる。そしてやさしい言葉で「里山」の大切さを説いた。

普段は虫捕りなんかしたことがなさそうな小さな人たちが嬉しそうに

虫を集めている。一緒に歩く大きな人は「逃がしてあげようよ」と

勧めるが、今森氏は「連れて帰ればいい」と笑う。

 

蛇の抜け殻を発見したり、蛇そのものをみつけて鞄に入れちゃった小さな人も。

とんぼもバッタもいつも遊び仲間だったことを大きな人も思い出す。

 

ひでこはあまりにいつもと同じ景色なのと行程が長かったのとでちょっと

疲れてしまった、が、

 

 

 

 

お昼ごはんをいただいたらほどほど元気になり、

 

   

 

おばちゃんたちのお店で鹿の角を買ってニコニコになった。

(ニコニコしながらとうさんに買えば?とマムシ酒も勧めてくれたが辞退)

 

 

 

 

午後は太鼓の演奏や絵本作家のあべ弘士氏の講演(元動物園の飼育員さんなので

とんでもなく面白い話だった)やあべ氏と今森氏の対談があり、ご飯と鹿の角で

元気一杯になったひでこもけろけろ笑いながら午後を楽しんだ。

 

 

最後にサイン会があった。

ひでこはあべ弘士氏の列で、『どうぶつえんガイド』を差し出して

「わたし、今日お誕生日なんです。メンフクロウを描いてください!」

とお願いしている。

 

 

 

わたしは古い歳時記を抱えて今森氏の列に並んだ。

この歳時記は俳句を始めた頃に文字だけの歳時記ではイメージが湧かないと

図書館で見つけ、誰も予約しないのをいいことに一年近く継続継続で

借り続け、しまいに取り寄せて購入した本で、写真を撮っているのが今森氏だと

気がついたのはずいぶん後のことだった。

このページの写真は子供の頃に見た畦にどっと咲いた彼岸花の景色、

小さなわたしの一面の彼岸花へのおそれに近い気持ちを

わたしの中から引っ張り出してくれた、まさに記憶のインデックスのような一頁だった。

そして、その時この句が降ってきた。

 

手叩けば燃え上がる畦曼珠沙華

(読売俳壇 福田甲子雄選)

 

 

 

 

 

 

 

里山はどこもなんとなく似ている。

それは景色や地形が似ているのではない。

それぞれの心の中の大切な時間や風景と

なにかがちょっとづつ重なっているからかもしれない。

小さい人たちもいつか思うだろうか、

里山の空気に包まれた時の嬉しいとも怖いとも

言葉に出来ないこの懐かしさ以上の何かを。

ひでこも思うだろうか。

 

 

 

 

 

金秋や大曲線の棚田道

 

田仕舞の煙の匂ふの村

 

翁が谷の茅の先の糸とんぼ

 

穴惑ひ棚田に衣を忘れをり

 

小さき手の摘む草の実の土産かな

 

茸汁村ぢゆうの椀並ぶ卓

 

雁渡る近江の山と水を見て

 

草の花仰木の水に流しけり

 

 

 

イベントは終わり、また電車に乗って帰った。

わたしたちの里山に。

 

伊賀神戸駅あたり

 

 

 

 

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2010.10.16

写真/文/句:坂石佳音

 

 

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この日、春と秋の年に二回あるBS俳句日和という視聴者参加型の

俳句の番組があり、出先から携帯電話で投稿した。

後日ビデオを見ていたら、一次予選を通過していた。

 

雁渡る近江の山と水を見て  坂石佳音

 

 

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