シモバシラ?・・・ユキヨセソウ?
 霜が降りる頃、この植物は存在感を発揮する。寒さや空っ風で他の花がなくなった殺風景な庭で、茎に真綿をまとったような姿を現す。
 夏の間もほとんど目立たない雑草に近い草である。それが本格的な冷え込みが始まると、こうして雪が吹き寄せられたような独特の自己表現をするのだ。
 原理は簡単で、地上部は枯れているが、根はまだ吸水しているので、それが導管を毛細管現象で上昇し、霜柱のように凍るのだ。
 だから2月にもなると、ほとんど吸水しないらしく、こんなに霜をまとわない。そのほかのしそ科の植物を良く見ると、同じような現象で、ささやかに霜をつけているものもある。
 毎年手入れもしないので殖えもしないのだが、木枯らしの吹きすさぶ寒い朝に、光に輝くこの姿が見られるのだ。
 畑に植えていたのではこの季節にはあまり鑑賞しないので、庭に移植している。
 さてこの名前なのだが、どうも正式名称はシモバシラというらしい。朝日新聞の一面に連載されている、花おりおりでそう解説されていた。しかし私は「ユキヨセソウ」という名前で買った記憶がある。
 下のようにチラッと雪が降ったときなど、吹き寄せられた雪のようにも見える。鑑賞するにはどちらでもいいことにしよう。
 この花おりおりの文章を書いている湯浅浩史君は、私が昆虫学の教室にいる頃隣の遺伝学にいた。
 私のように学生活動などには関心は無かったが、私が編集していた学友会の機関誌「ふぁるめん」には時々寄稿してくれていた。
 私が自分の研究分野以外の文章を書くのに対して、彼は自分の研究と関係した何かのテーマで文を書いていた。
 学生の頃のそんな違いが、その後を決めてゆくのかもしれない。今になってみると彼は自分の専門的な研究から広く活動しているのに対して、私は昆虫の知識は痕跡程度にしか残っていない。
 さてこのシモバシラは、珍しく2日間連続で掲載され、名前の由来を説明されていた。