コンニャク
 コンニャクイモは長い間栽培してきた。子供の頃、コンニャクは家で自給するものと思っていたから、毎年畑のひと畝をコンニャクに当ててきた。ところがいざ芋からコンニャクを作ろうとすると、失敗続きだった。もう20年も昔になるだろうか。記憶をたどってやってみても、うまく凝固しないのである。何回か失敗して長い間そのままだったのだが、最近仲間が集まるようになり、改めてチャレンジすることにした。
 剪定した枝などを燃やして、二日がかりで灰を作った。失敗したときのことも考えて、水酸化カルシュウムの粉末も買ってきた。今はインターネットで調べると、沢山の情報が得られるし、あちこちで作り方の講習も開かれている。作ることはそんなに難しくないものだった。
 コンニャクの味は、芋によるということなので、それなら自耕園の根菜は絶対おいしいから、うまいコンニャクが作れるはずである。
 コンニャクの学名は「腐ったオチンチン」というような意味だそうで、なるほどと納得する。
 職場に色とりどりのカラーなどが花瓶に挿してあった時、コンニャクの花を何本か加えておいた。こげ茶色で縞のような濃淡があり、グロテスクな感じがする。ひとしきり詮索が終わって眺めていたが、気温が上がってくると異様なにおいがする。あわてて捨てた。ハエに花粉を媒介してもらうので、腐肉のような耐え難いおいがするのだ。
 田舎の畑で、にょっきりと棍棒のようなものが突き出て、赤黒い粒粒が付いていた。回りの包が縮んで、できてくる。また娘が幼い頃、田舎のおじいちゃんがコンニャクは金玉の砂取りじゃと言うてたけど、金玉って何?、と聞かれて困った。
 コンニャクイモは、梅干くらいな小さなキゴから、5年くらいかかって大きな芋になる。そして花が咲いたら球根はなくなってしまうと言われている。
 実際はすべてなくなるのではなく、小さなキゴが残ったりするようだ。しかし蓄えたエネルギーをすべて使い切るので、花を咲かせずにコンニャクにしてしまうのがよい。
 だから毎年こんにゃくを作らないときは、花を咲かせて無駄に消耗させていたわけだ。この仲間は野生のヤマトテンナンショウなどのように、球根の蓄積が多いときはメスになって実を結び、蓄積の少ないときはオスになるような、性転換をするものがある。コンニャクの場合は、上のほうにオスの花が付き、下にメス花がある。栽培するものの中では、長い年月かけて収穫する珍しい作物だ。
 コンニャクイモの関税率は、1kg当たり2,796円。1,706%にもなって、米の778%と比べても高い。(日経新聞08年12月7日) 生産の9割を群馬県が占め、歴代の首相を出してきた特権なのだそうだ。
 関税が下がると、東南アジアから安く輸入されることになるだろう。しかしある程度は加工食品として入ってくると、安全性に不安が残る。
 コンニャクを作っている人の話では、相当な混ぜものをしてもコンニャクの感じは出せるそうだ。つまり販売されているコンニャクは、純粋でないものも多いということになる。
 芋から作る手作りのコンニャクは、本物中の本物といえるし、まして灰を作って作ると、昔のおいしいコンニャクが出来る。あの色は、本当は灰の色なのだ。
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