ユズ風呂

 今年もユズが生った。ただしシシユズが今年はいつもより多く30個以上なったのに対して、ハナユズはいつもよりちょっと少なめだった。数えては見なかったが150個くらいなのだろうか。
 子供のころユズは家になかったので、ぜひほしいと思っていた果樹だ。「桃栗三年柿八年、ユズのおおばか16年」といったものだ。植えてから生るまでの年数で、ユズが一番年数が長い。ただし実際は生るまでそんなにかかったわけではないが、枯れたりして案外ふんだんに取れるまで時間はかかったような気がする。
 先にハナユズが取れるようになり、昨年からシシユズがなり始めた。ほんの少し皮を削って漬物や澄まし汁やうどんなど、何に入れても味を引き立ててくれる。「みかん取ったら皮やろぞ、ユズとったら実やろぞ」と子供のとき教えられた。実をやってしまうという比喩が、ユズの皮の価値を引き立てる。
 そんなに沢山もいらないものだったから、いつも春までぶら下がっていて、やがて落ちて腐らせていた。昨年から冬至にほとんどを取って、ご近所に配ったり子供のところに送ったりして、ユズ風呂にしてもらっている。これなら木も早く楽になるし、少しでも豊かな香りを楽しめる。なんとなく幸せを湯船の中で感じるひと時である。