さて特別出演ゲストとして期待されている、イタチに焦点を合わせてみよう.まだ幼い頃、イタチという言葉は街でもよく耳にした。 |
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イタチは何処にでも出没していたように思う. 一般にイタチは低山の水辺や平地から、時には人家に棲み付いたりする.現在ではもうそんな所には殆どいないとは思うが。その行動圏内の樹の根元石下等に幾つかの穴を持っているのが普通である、と言われている.又泳ぎ、木登りがうまい.主食はネズミらしいので、野ネズミ(野ウサギやヘビ)の天敵としては有益といえる.野ネズミの捕食が農業上有益なことから、雌イタチの捕獲を禁じていた地方もあったということだ.その一方で養魚池等を荒らすので、罠を仕掛けた農家もあったわけである."鼬罠"(冬)という季語さえある. |
ニホンイタチ;下比奈知にて。撮影:田中豊成 |
毛皮は柔らかく比較的良質なので、ミンクの代用品として有名だ. 日が落ちると穴から出て、川や谷筋を走り回り、獲物を狩る。 |
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ネズミの穴を探ったり、川では魚や蛙を捕まえたり、藪では蛇、トカゲ、バッタ等を喰い、木に登っては小鳥を殺したりする. 又鶏は大好物で、鶏小屋の襲われた話は、それなりの情報として嘗て街でもよく聞いた覚えがある. 時には獲物の血を吸い脳を喰うのみで捨て去るなど、まるで唯獲物を殺すのが趣味というような残忍な一面があって、自ずと忌み嫌われる風習が国内外共にできたようだ。そうした絡みからか、イタチにまつわる慣用句、諺の類がいささか多いのは意外、と言うより複雑な気持がする.大辞林(三省堂)に出ているものを列記してみた. |
(1)鼬無き間の貂(テン)誇り(=鼬無き間の鼠) (2)鼬の最後っ屁(サイゴッペ) (3)鼬の目陰(マカゲ) (4)鼬の道切り(=鼬の道) (5)鼬眉目(ミメ)よし |
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これらから窺い知れること、その(1)は、自分より強い者が居ない間だけ威張るということだから、テンはイタチに一目置いているようだ. (2)は、追い詰められると悪臭を放ち、敵がひるむ間に逃げ去ることから、切羽詰った時の非常手段を用いることの意や、最後に醜いことをして逃げだすことの意に使われている.しかし実際に経験したという人はいなく、作り話に過ぎないという意見もある.肛門の両側に肛門腺があることから、そう推定されているに過ぎないのかも. |
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事実は一体どちらなのだろうか.肛門腺が有るからには放屁するに違いないとは思うが。 |
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(3)は、イタチが後ろ脚で立ち上がって、周りを窺う行為からきている。確かに印象深い所作だ.前脚をかざしているように見えるのだろう.直接見たことはないが、何か他の動物でも同じ様なしぐさをしているのを、テレビで見たような気がする.ここでは人間が手を額にかざして物を見る動作を指している. 後ろ脚で立っているイタチに顔を見られ、眉毛の数を読まれると、化かされるという俗信がある.だから「イタチに出逢ったら眉に唾をつけろ」という面白い伝承もある.それ故に(5)のような呪文が生まれたと考えられる. |
「イタチの姿を見たり、鳴き声を聴いたりすると凶事が起こる」という迷信もあって、凶事を免れる為にこの呪文を唱えればよい、という筋書きだ.
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日本では「イタチが道を横切ると縁起が悪い」として、嫌う慣習もある。又「左へ抜けると福があり、右へ抜けると貧乏する」などと言ったりする、とも書かれている(万有百科大事典・小学館).かかる関わりから、「通路を遮断されると、イタチはその道を二度と通らない」という俗信もある。(4)の発生源である.交際や音信が絶えた場合の喩えに用いられている、とか・・・。 更に(6)として挙げるならば、「鼬ごっこ」など日常茶飯事に使われている言葉もある. |
![]() パン切れを片足で押え、しきりに周りを警戒しながら食べている. |
まあ何と言ったらいいのでしょう.イタチはかくも深く人間と関わり合ってきたのだ.それだけ人間に密着した存在であった。 |
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![]() 特に裏山には気を配っている感じだ.振り向き振り向き、食べている. |
それとも昔はそれ程沢山のイタチが、至る所(街も含めて)に居たことを意味しているのだろうか.タヌキ、キツネに劣らぬ里山動物であることは確かだ。かつてイタチは国策として移入(ミンク)されたこともあったと、読んだことがあるがそのあたりも影響していたのかも知れない. タヌキやキツネに比較して一番わかり易いのは、耳が三角型ではなく平たく丸い(耳穀).しかも小さいので目立たない.従って頭の風貌はさながら海坊主といった印象を受ける.処によっては「小坊主によく化ける」と言われるのも納得がいく. |
唯、残忍な行動をする性格を持ち合わせていることから、人間に忌み嫌われる俗信、風習を生んできてしまった。至極残念に思う.丸坊主頭の可愛らしさがあるが故に、その残忍性に違和感を禁じえないのが正直なところだ.丸頭はそんな性格を償う為に、出家したとでも言いたいのだろうか. "丸坊主 出家装い 寒詣" |