【月見れば】よべのつき
二〇一一年 喫茶『つぶやく堂』にて

やんま.さまのホームページつぶやく堂は
インターネット世界の片隅をうろうろするわたしの一番落ち着く場所。
どこにいてもつぶやく堂に戻りお茶をいただくと
ほこっとします。(俳句喫茶ですので)
春夏秋冬365日ありがとうございます、
やんま.さま、つぶやく堂のみなさま。
十年目の月の秋です。
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2011。8.29
月を詠むようになって十年目の八朔、新月です。
今年もお騒がせしますが何卒お許しを。
例年通り昨日の月を今日詠むので『よべの月』です。
今日の新月は明日詠んでアップします。
やんま.さま、今年もよろしくお願い申し上げます。

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2011。8。30
八月二十九日(旧暦:八月朔日)
月の出 午前五時過
月の入 午後六時過
八月の間に旧暦の八月がやってきた。
この夏は暑いのか寒いのかわからなかった当地、
我が家は一度も冷房は使わず、
夜も何も夜具をかけずに寝る日は一度もなかった。
もちろん日中は恐ろしいほど暑かったけれど。
八月朔日、月はギラギラの太陽と一緒に空をわたっていった。
八朔や畑に日の影月の影

またあした。
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2011。8。31
八月三十日(旧暦:八月二日)
月の出 午前六時半前
月の入 午後六時半過
畳の無い我が家は床掃除が欠かせない。
ちょっとさぼると埃が遊びだすし、
今の季節は裸足の足の裏が気持ち悪い。
夏の間はなおのことで、「埃」と言うのもいやな
夏の昼間だが、「秋の埃」というとなんだかモノが
違うように思えるのが不思議だ。
たとえば本でいえば遠い過去の匂いの古書、
・・・かな?
あちこちで稲刈りが始まった伊賀の秋。
今日も使い慣れた箒で秋の埃を掃おう。
ゆるらかなヘカテーの衣二日月

またあした。
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2011。9。1
八月三十一日(旧暦:八月三日)
月の出 午前七時半過
月の入 午後七時半前
台風がやってきているので
南側の掃き出し窓の簾を巻き上げた。
おろしてしまおうかと思ったが、
まだもう少しの間簾のある景色が見ていたかった。
午後からあいにくの雨で、月は見えず。
細い細い月があそこにいる・・・と思いつつ見つめる西。
ひとつ他所向く八月の百合の花
繊月や疑似餌の魚のへの字口
大胆な母ちやん床屋三日月

またあした。
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2011。9。2
九月一日(旧暦:八月四日)
月の出 午前八時半過
月の入 午後八時過
バレエの送迎で走る20分ほどの間に、
雨の様子が幾度となく変わる。
バケツをひっくり返したように降っているかと思えば
角を曲がったとたん地面が乾いていたり。
泣いたり笑ったり忙しそうな空、
台風の名前にはやはり女性の名が似合う。
(今は女性の名とは限らないらしい)
ただし、ほどほどのパワーであってほしいなぁ、
涙も、嘆き声も。
甘いものをあげたらご機嫌がよくなるだろうか、タラス。
台風裡ひたひあづくる夜の窓
四日月柱時計の大きネジ

またあした。
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2011。9。3
九月二日(旧暦:八月五日)
月の出 午前十時過
月の入 午後八時半過
針を持つことは嫌いではないが、
針に糸を通すのがあやしいこの頃、
字を読むときも明るい方へ明るい方へと向いているわたし、
ヒトの目は光の反射を情報として
取り入れているのだなぁと改めて思う。
台風はまだがんばっている。
こんな日に鳥や虫や魚はどうしているのだろう。
ことにまぶたを持たぬ魚たちは。
夕月やたちまち終はる針仕事
大野分石食みし魚潜む川

またあした。
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2011。9。4
九月三日(旧暦:八月六日)
月の出 午前十一時過
月の入 午後九時半過
この台風で色々な予定が流れたり。
家に居る時間が突然出来たら何をする?
娘はプリンを作ったりアップルケーキを焼いたり。
わたしもチーズケーキを焼いたり米粉のスコーンを作ってみたり。
二人とも良い出来やら気に入らない出来具合やらさまざまだが、
家でお茶をいただくにはまったく大丈夫な味。
砂時計は落ちた分だけの砂の山が下にできる、
台風のもたらしたちょっといい時間。
ていねいにたたむ便箋六日月
秋出水刈り残りたる稲あまた

またあした。
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2011。9。5
九月四日(旧暦:八月七日)
月の出 午後正午過
月の入 午後十時半前
台風がようやく日本上空を通過して、それでもまだ雨は降っている。
あちこちでまだまだ水が暴れている。
我が家は劣化してぐらついていたラティスフェンスが倒れただけのことで済んだ。
早く月に会いたい、
そこにいるのは知っているのだけど。
宵月や常に戻りし川の色
台風一過海目指し水奔る

またあした。
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2011。9。6
九月五日(旧暦:八月八日)
月の出 午後一時過
月の入 午後十一時半前
仕事を終えて車に戻ると、
山のあちこちから雲が空に吸われるように立ち上っていた。
空にはまだ大きな厚そうな雲があり、
まるで母の元に戻っていく子らのようだった。
大きな雲と山の間に細い横長の空があった。
颱風往ぬ山峡の雲吸ひ上げて
おつきさま見たてふ児らのひたひかな

またあした。
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2011。9。7
九月六日(旧暦:八月九日)
月の出 午後二時過
月の入 −
八日の月はわたしが空を見るときは雲がある状態で、
月が出ていたことは娘に聞いた。
九日こそ、と思っていたら、夕刻バレエに送る車中、
空に浮かぶ白い月を助手席の娘が先に見つけた。
娘を送って後は月とたっぷり差し向かい。
でも、少々くやしかったり。
月がゐるよと細き手にをしへらる
前掛けのポケットの鍵上り月
.
またあした。
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2011。9。8
九月七日(旧暦:八月十日)
月の出 午後三時
月の入 午前零時半前
助手席にて夕月発見、
車は運転してもらうに限る、でもなく、
本当は自分で運転したい方。
自分で運転していてもひとりなら車を停めて景色に見とれることも。
たれおもふこころのかたち十日月

またあした。
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2011。9。9
九月八日(旧暦:八月十一日)
月の出 午後三時半過
月の入 午前一時半前
夜、伊賀上野に出かけた。
町の小路にも山の橋の上にも月があった。
電線を抜け高々と町の月
上り月ふふふと笑ひ別れけり

またあした。
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2011。9。10
九月九日(旧暦:八月十二日)
月の出 午後四時半前
月の入 午前二時半前
もともと夜更かしだが、
そろそろ月を見送れなくなってきた。
月の出を待つ楽しみがやってくる。
宵月夜しばし眺むる湯のたぎり
天心の真白き月を観て眠る

またあした。
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2011。9。11
九月十日(旧暦:八月十三日)
月の出 午後四時半過
月の入 午前三時半前
伊勢、賢島にて。
乳房四つ並ぶ湯ぬちや宵の月

またあした。
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2011。9。12
九月十一日(旧暦:八月十四日)
月の出 午後五時半過
月の入 午前四時半過
突然やってくる雨に驚かされたり。
雨上がりの青空はまったく秋のものだった。
桂月や窓無き部屋のてる坊主
小望月飯粒拾ふ足の裏
今日は満月、晴れますように。

またあした。
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2011。9。13
九月十二日(旧暦:八月十五日・中秋)
月の出 午後六時過
月の入 午前五時過
いつもの店で団子を買って、

いつものように月を待つ。

今日は夕刻ちょっとだけ出かけるので、

夕陽を見る時に一番好きな場所に寄り道。

一面の田園風景の中、収穫の景色に出会える幸せも。

日が落ちて、

東の空に月、まんまるのお月さま。
途中で一緒になった娘と月と三人で帰りました。
三五夜の窓に携帯電話の灯
月光降る百羽の鳥の眠る木に
影踏みに誘はれてゐる月夜かな
手の窪に月の光をためてみる
名月や布団はみだす子らの足
児の腹に上がけ掛くる良夜かな
雲母めく小鳥の瞼月天心
月今宵ちひさき鈴を振つてみる
ちぎれ雲白々遊ぶ良夜かな
またあした。
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2011。9。14
九月十三日(旧暦:八月十六日)
月の出 午後六時過
月の入 午前六時過
句会で大阪へ。
句会は午後六時からなので、
帰路月に出会えるはず、と思ったら
大阪はちょっと曇っていた。
電車で二時間弱の間に雲が切れ
自宅最寄り駅にたどり着く頃は美しい月が天にあった。
ただいま。
二八月旅人の目で立つ大阪
十六夜や空也もなかの絹の皺
天心の月確かむる車窓かな

またあした。
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2011。9。15
九月十四日(旧暦:八月十七日)
月の出 午後六時半過
月の入 午前七時過
『子どもを信じること』という本を読んでいて、
先日娘に謝ったことを思い出した。
息子も同じようにもうわたしが叱ることは無いんだと思った日に、
今まで厳しかったことを謝って、
それにめげずに育ってくれたことを感謝した。
わが子がわが子供ではあるけれど
「こども」では無くなった日のこと。
立待や尻尾の長き三代目
十七夜時計回りの円相図

またあした。
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2011。9。16
九月十五日(旧暦:八月十八日)
月の出 午後七時過
月の入 午前八時前
木金土は娘はバレエ。
いつもはバレエにあわせて抜けてくるのだが、
今は委員会やら色々でなかなか調整ができないのか、
「迎えに来て」というので学校へ。
ちょっと余った時間をどうしようか、
家に帰る?早めにスタジオ?それともお茶?
結果は・・・きかなくてもわかる?
月を待つふたつのカップ十八夜
居待月床に手をつき膝をつき

またあした。
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2011。9。17
九月十六日(旧暦:八月十九日)
月の出 午後七時半過
月の入 午前九時前
義母は嬉しそう。
にこにこ顔の前には孫二人の手製の菓子。
和は兄、洋は妹のそれぞれ店や学校で作ったもの。
仏壇に向かって長話。
月は雨の向こうがわ。
臥待ちや湯呑茶碗の魚魚魚
高みより誰こぼす雨寝待月

またあした。
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2011。9。18
九月十七日(旧暦:八月二十日)
月の出 午後八時半前
月の入 午前十時前
雲行きが怪しいので心配していたが、雲の合間より半分の月。
二十日の月は更待月(ふけまちづき)。
今年は亥の刻よりもずっと早く顔を出してくれた。
からつぽの似合ふ鉄鉢亥中月

またあした。
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2011。9。19
九月十八日(旧暦:八月二十一日)
月の出 午後九時過
月の入 午前十時半過
NHKの番組でリアルタイム画像の宇宙から見た月の入りを見つつ、
窓から顔を出してこちらの月の出を確認。
ああ、不思議。
ふたつの月を見てをりしゆふべかな
たつぷりの梅干番茶真夜の月

またあした。
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2011。9。20
九月十九日(旧暦:八月二十二日)
月の出 午後十時前
月の入 午前十一時半過
乳がん検診の予約をしてあったので、
マンモグラフィー検査は痛いとか
そうでもないとか喋りながら皆で出かけた。
終わってまた、痛かったとかそうでもなかったとかわいわいと。
夜、娘の希望で映画『神様のカルテ』をレイトショーで鑑賞。
秋桜や帰路の乳房の薄つぺら
せんせいと呼ばるる仕事月の雨

またあした。
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2011。9。21
九月二十日(旧暦:八月二十三日)
月の出 午後十一時前
月の入 午後十二時半過
手紙は夜に書いてはいけない。
ことに恋文は。
淡々と半月わたる雲の上
嘴を寄せ合ふ小鳥下り月
たれに出す封書二十三夜月

またあした。
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2011。9。22
九月二十一日(旧暦:八月二十四日)
月の出 午後十一時半過
月の入 午後一時半前
今年の台風は一体どういうことなのだろう。
伊賀は朝は雨と風の中だったが今は静か。
学校が休みになった娘は菓子を作っていた。
下書きのひよろひよろの線若ちちろ
真夜中の書庫台形の月あかり

またあした。
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2011。9。23
九月二十二日(旧暦:八月二十五日)
月の出 −
月の入 午後二時過
油断をしていたら、秋がどどっとやってきた。
古釘の濃鼠の錆秋寒し
宵闇や鴨居を掴む衣紋掛

またあした。
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2011。9。24
九月二十三日(旧暦:八月二十六日)
月の出 午前零時半過
月の入 午後三時前
吟行で滋賀まで出かけていた。
終電までに帰宅。
我が空の月はまだ。
乗り換えの夜寒の駅のひとりかな
秋燈や二十三時のクロワッサン
淡海乃海寡黙な月のひとかけら

またあした。
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2011。9。25
九月二十四日(旧暦:八月二十七日)
月の出 午前一時半過
月の入 午後三時半前
夕刻、伊賀の城之越遺跡に居た。
『竹灯り幽玄祭』は16時にはじまり、
18時さまざまなオブジェや
「祈りの灯り」と名の付いた無数の行灯に火が。
月は遠慮していたので、地の星を堪能できた。
一燈のいつか万燈星月夜
月の舟いざなふ伊賀の灯しかな

またあした。
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2011。9。25
九月二十五日(旧暦:八月二十八日)
月の出 午前三時前
月の入 午後四時過
早起きなのか夜更かしなのか、
もうほとんど見ることの出来ない月。
今朝は雨。
有明や一村統ぶる深庇

またあした。
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2011。9。27
九月二十六日(旧暦:八月二十九日・晦日)
月の出 午前四時過
月の入 午後四時半過
太陽とほぼ一緒にゐる月、
こうしてまた新しい月が始まる。
本日八月晦日。
折り紙の頸細き鳥朝月夜
友人のブログに一人の女性の訃報。
わたしは全く存じ上げない方だが、
死というものに触れると生を思う。
生に触れ「いのち」をおもうことに似ている。
一適のたましひ還る花野かな

>゜))))彡
息吸つて始まるいのち天高し
今日は新月。
今年のよべの月はこれで終了です。
旧九月の十三夜(十月九日です)にまたお会いするかもしれませんが、
ひとまずおしまい。
ありがとうございました。

2011年 よべの月
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【 十三夜 】
2011。10。11
十月九日(旧暦:九月十三日)
今年の名月は見事だった。
ひと月後の十三夜が晴れるように願っていたら、
それはきれいな月夜を賜った。
ありがとう、お月さま。
夫の電話がリリンと鳴った。
いつもお米をわけていただく方からの連絡。
晩秋やとぷりこぷりと排水管
元気かと始まる電話十三夜
おじやんの腕の太さや今年米
月見豆孫の名告げて笑ひたり
とび色のスリッパを買ふ冬支度
男らの膝のうしろのゐのこづち
秋愁ひ千年前の黒髪も
ゆるゆると前掛けはづす秋夜かな
次は11月5日の十日夜(とおかんや:旧十月十日)が晴れるますように
・・・と欲張ってみる秋。

では、また来年。

Photo / 句: 坂石佳音
2011