【月見れば】よべのつき

二〇〇九年 喫茶『つぶやく堂』にて

 

 

 

 

 

 

 

 

やんま.さまのホームページつぶやく堂

インターネット世界の片隅をうろうろするわたしの一番落ち着く場所。

時折は勝手にお留守番もします。

きちんと留守番になっているのかは謎ですし、

このところなんだかんだと走り回っていて駆け込んで拝見するだけの

日も多いのではありますが。

 

春夏秋冬365日ありがとうございます、

やんま.さま、つぶやく堂のみなさま。

今年も月の秋です。

 

 

 

 

 

 

 

2009。9.19

 

先ほど日付が変わった。

だからこれは昨日のこと。

突然休みをいただいてどうしてもの用事を済ませ、そのついでに

夏に参加したイベント『風鈴列車』の風鈴をいただきに伊賀鉄道上野市駅を訪ねた。

わたしの書いた短冊のさがった風鈴はすべていただけるとのことで、句友の句、

子供たちの句などとりまぜ二十以上の風鈴を持ち帰った。

それぞれ句の持ち主に渡したとしてここに残る相当数の風鈴をどうしよう。

今日は八月朔日、まだ真夜中だがあと数時間すれば月は太陽とほぼ同じ時刻に東に顔を出す。

風鈴を全部ぶら下げてみようか、鳴らしてみようか。

「こんな夜中に何事?」と顔を出さないだろうか、お月さま。




風鈴の舌の沈黙秋ともし


縁側に月待つこころともりをり



今日よりはじめます、
今日の月を明日こちらに持参するので『よべ(昨夜)の月』です。

やんま.さま、今年もよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。20

 

九月十九日(旧暦:八月朔日)
月の出 午前六時前
月の入 午後六時前


 


重ならぬふたつの梢初月夜



「初月夜」とはいうものの、月は太陽と一緒に出て沈んでしまったので

夜はどこか地球の裏側に。
今日は小学校の運動会にお呼ばれ。(写真係)
お日様の影からこっそり運動会を覗いていましたか?お月さま。

 

 

 

 

 

 

今一度ふりむき運動会をはる

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。21

 

九月二十日(旧暦:八月二日)
月の出 午前七時過
月の入 午後六時半




だんまりの着ぐるみの芯二日月



休日だったが朝から他店の助っ人に。

着ぐるみの中身はその店の若いアルバイト君で、

黙々と子供たちの『優しいヒーロー』の役をこなしていた。

嬉しそうに駆け寄る子、駆けてきて、でもこわくて泣いてしまう子、

最初は照れているけれどだんだん慣れて抱っこされる子も。

「どれがすきですか?」と果物の絵をたくさん描いてきてくれた子がいた。

着ぐるみ君は声を出せないので、

 

「おばちゃんがきいてみるねー」

 

と大きな頭に耳を寄せたら真面目な青年の声で

 

「りんごです」

 

と答えがかえってきた。

わたしは昼過ぎで帰ったが、彼は夕方までこの姿で店に出た筈。

もう終わったろうか、ねえ、お月さま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。22

 

九月二十一日(旧暦:八月三日)
月の出 午前八時過
月の入 午後七時前

 

 

 

<朝>

自分の朝食のためにトースターをあたためた。

空は雲ひとつ無い晴れ。今日は三日月、月の出の時刻は日に日に遅くなる。

 

 

 

トーストにバター三日月のぼる頃

 

 

 

焼きたてのクロワッサンが欲しくなった朝。

 

 

 

<夕>

仕事からの帰り、もしも空が青ければ青山高原に車で登ろうかと。

なぜって、西に沈む夕日を追いかける三日月を見たいから。

残念ながら雲が出て、三日月との逢瀬はかなわず・・・でもなかったり。

見えなくてもそこにあることは知っている、なにをしていても、いつも。

 

 

 

月見送るやカーラジオそつと切り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。23

 

九月二十二日(旧暦:八月四日)
月の出 午前九時過
月の入 午後七時半過

 

 

 

ふいに鳴るピンクの電話四日月

 

 

 

『特殊簡易公衆電話』というらしい。

鳴ると店のおばちゃんが「はいはいはい」と受話器をとる。

 

わたしが小学生の頃、同級生のところに電話をかけるといろいろな人が電話に出た。

「Sさんですか?しょうこちゃんはいますか?」と問うと

パタパタと足音がして遠くで「Sさーん、しょうこちゃんに電話ぁ」と

大声で呼びかけるのが小さく聞こえていた。

初めて彼女の住まいに遊びに行くと、閉鎖した工場の二階を改造したという

集合住宅の暗い廊下の端に赤の公衆電話。

しょうこちゃん一家はある日どこかに行ってしまった。

あの赤色が、忘れられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。24

 

九月二十三日(旧暦:八月五日)
月の出 午前十時半前
月の入 午後八時半前

 

 

 

裏向きのカフェの黒板五日月

 

 

 

公園の桐の木の下に落ちていたので桐の実と思ったベージュのふかふか。
わたしの薬指の爪ほどのそれは実ではなく花芽らしい。
本当の実は小さな小さな種を吐き出し殻だけになって空に在った。
同じ空であたたかそうな外套を着込んだ花芽は来春に花開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。25

 

九月二十四日(旧暦:八月六日)
月の出 午前十一時半前
月の入 午後九時過

 

 

 

今日は久しぶりの久しぶりに何も無い休日だったが、

電話を待っているということもあり出かける予定はまったく無かった。

本当はとてもとても行きたいところがあったけれど、それもぐっと辛抱して

自宅待機・・・のつもりがどうしても郵便局に行く用事ができてしまい、駆け足で出かけた。

秋晴、どこかで木犀が匂う。

 

 

 

主待つ飴色の犬上り月

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。26

 

九月二十五日(旧暦:八月七日)
月の出 午前十二時半前
月の入 午後十時前

 

 

 

一行でをはる恋文夕月夜

 

 

 

手紙はややこしい。

時候の挨拶はどうしよう、

長々と書いたものの、伝えたいことはひとつだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。27

 

九月二十六日(旧暦:八月八日)
月の出 午後一時過
月の入 午後十一時前

 

 

 

椋鳥を好きな電線月の舟

 

 

 

ムクドリは日中はてんでに餌をとり、夜になると群れてやすむとか。

ショッピングセンター脇の電線にずらっと並ぶムクドリを見た。

話には聞いていたが確かに千羽近くいるだろう。

山近し、川近し、田畑近し。

田園に遊び町に眠る。

「遊んでいるわけじゃないよ、ニンゲンじゃないんだからさ」と

ムクドリに叱られるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。28

 

 

九月二十七日(旧暦:八月九日)
月の出 午後二時前
月の入 午前零時前

 

 

 

盈月や母より生れて父のかほ

 

 

 

子供は女が生むのでわたしの子には間違いなしだが、

この顔はどうみてもこの父の子にも間違いなしというのが出てくると楽しい。

育つほど似てくるのもまたおもしろい。

もうひとり、「母より生れて母の顔」が我が家にはいるが、

くるんと裏返すと中身はこれまた父の子に間違いなしのよう。

家族は楽し。

そろってたこ焼きなんぞ焼いたりすれば尚。

 

 

 

たこ焼きのどれも大蛸宵月夜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。29

 

九月二十八日(旧暦:八月十日)
月の出 午後二時半
月の入   −

 

 

 

午後、仕事に出かける前にポストに封筒があった。

中には小さな手縫いのストラップ。

ポジャギ(Pojagi、韓国パッチワーク)というのだそうで、

送ってくださった方は今回この材料を本場韓国で手に入れてきたとのこと。

ポジャギ、Pojagi、ぽじゃぎ、 不思議な音。

一心に針を動かす人の美しい横顔を思う。

 

 

 

手仕事の美しき手ざはり月の雨

 

 

 

 

 

 

仕事中、ポケットの中身がぶるぶるっと振動した。

反射的に振り向いて時計を見て、そっとポケットをおさえたが、

もうふるえてはいなかった。

 

 

 

雲上の月の白さを思ひをり

 

 

 

地上は雨です。

 

 

 

 

 

 

 

2009。9。30

 

九月二十九日(旧暦:八月十一日)
月の出 午後三時
月の入 午前一時前

 

 

 

モナリザの足元に籠十日月

 

 

 

・・・のような気がする。

本当は十一日目の月。

東のあの厚い雨雲の向こうにのっと出ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。1

 

九月三十日(旧暦:八月十二日)
月の出 午後三時半
月の入 午前二時前

 

 

 

宵月や底なし沼のマグカップ

 

 

 

コーヒーは飲まなかった。

苦いから。

今は無いとさびしい。

ビールは飲みたくない。

苦いから。

ビールを自分で淹れるようになれば好きになるだろうか。

我が家の何かの懸賞で当たったエスプレッソメーカーは

鉄人28号にちょっと似ている。

雨の夜が続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。2

 

十月一日(旧暦:八月十三日)
月の出 午後四時前
月の入 午前三時前

 

 

 

ここ数日は月の出る頃になると雲が広がり雨だった。

午前中は青空が出ていたのに午後には曇ってきてがっかりしたが、

夜半、駅まで車を走らせていたら空の一点がほのと明るい。

車をとめて紙漉の槽の中に紛れ込んだような月をしばらく眺めた。

 

 

 

草の葉の小さく伸びする月夜かな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。3

 

十月二日(旧暦:八月十四日)
月の出 午後四時半前
月の入 午前三時半過

 

 

 

月見団子は芋のような形の白い団子の上に漉し餡の帯でなければならないという

『西』生まれの家人の希望により、毎年それを。

丸いお団子を積む『東』には「団子盗み」という十五夜の行事があるようだが

この団子ではできない。(盗まれたら家人が泣くだろうし。)

三重は東海ではあるが、関西と「おとなりさん」なので、

西や東やいろいろと楽しむことができるよいところ。

 

夕刻遅くなったので、いつものショッピングセンター内の店では売り切れ。

住宅街の中で営業する店まで足を伸ばした。

 

 

 

乳色の菓子舗のあかり小望月

 

 

 

小学校のお誕生会でやよいちゃんにもらった竹の鉛筆立はどこにあるのだろう。

雨、遠い日のことを思う夜。

 

 

 

待宵や座り机に竹の筒

 

 

 

十月三日は十五夜。

晴れますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。4

 

十月三日(旧暦:八月十五日)
月の出 午後五時前
月の入 午前四時半過

 

 

 

昨年は行けなかった伊賀上野城の観月薪能に、今年は行ってきた。

 

 

 


雨の続く幾日かだったので心配をしていたが、当日は朝から晴れ。
昼過ぎに少々曇ったが、留守番隊の夕食を途中まで作って
(仕上げは息子に頼んだ)出かける頃には青空。
開演は18時、開場は17時ということで、ちょっと早めの16時に出発、
途中ちょっとつまむものを購入したり、恒例の娘とのキョロキョロが始まった。
 
 


 
 陽にむかふフロントガラス秋の夕
 
  秋うらら籠に飛び込むチョコレート
 


 
市役所の駐車場は一般の駐車は通常は有料だが、今日は管理人さんが
にっこり笑ってそのまま入れていただいた。
お城の駐車場は案の定いっぱいになっていたようで、
どんどんこちらに車が流れてくる。
上野市役所は上野城のすぐそばで、提灯の連なる道を
「夜になったら灯るね」と帰りのことを思いながら
てくてく歩くのがまた楽しい。
近所の高校の吹奏楽部の練習する音が流れてくるのも、中学校で
チューバを吹いている娘には嬉しいらしい。
 
 


よく響く金管楽器夕紅葉
 


  
開場時刻ちょっと過ぎに着いたら、舞台近くの茣蓙席の最前列の真ん中当たりは
すでに埋まっており、その後ろ五列ほどは席が取ってあった。
後列の椅子席はすでにほぼ満席に見え、座布団を持参していた我々は
最前列の上手、橋掛かりの前に席を取り、ちょっとうろうろ。
本日のプログラムを受け取り記名したり、お茶席でお薄をいただいたり。


「今年のは苦くないね」


と娘。このお茶の味は昨年と変わらないが、
彼女はこの春から朝の紅茶の砂糖をちょっとずつちょっとずつ減らし、
今はノンシュガーで飲んでいるのだから、

お薄がいつもより苦くないのはあたりまえ。

 

「あら、オトナね、わたし。」

 

なんて嬉しそうだったが、
母の菓子にまで手を伸ばそうとするあたりまだまだ。

 

 

 

眼福のたとへばまろき月の菓子

 

 

 

 

 


自席に戻りそれでもまだ時間があるので持参のおにぎりを食べたり
まだ日のある城の様子を写真に撮ったりしながら待つ。
娘ももう慣れたもので、きちんと時間つぶしの道具を持っている。
18時きっかりに篝火に火が入り、薪能が始まった。
月もいつもの場所にいつものようにのぼり始めた。

 

 

 

 


 
  
笛方に誘はれ出づる三五月
 
  月のぼる美しき手の鼓方
 
  秋冷や面の下ののどぼとけ
 
  松が枝に捉まへられし大き月
 
  月今宵小面まばたきしたやうな
 
  うつむけば目瞑るをんな宵の月
 
  月の蛾の降り来る能の篝かな
 
  動かざる芸の眩き月今宵
 
  ゆるゆると火こぼす月の篝かな

 

 

 

 

 

 

 

 


上演開始から三時間、開場からだと四時間戸外に座り込んで
母も娘も冷え切ったので、ちょっと寄り道して
温かいものを体に入れてから帰った。

 

 


  月真白川辺の鳥の夢いくつ
 
  月天心未だ眠らぬ無人駅
 
  幽玄にいつとう遠きすいつちよん
 


お茶をいただいているときも、車が国道を走っているときも
月はしづかに空に在った。
いつまでこうしてふたりで出かけられるかな、

月の夜に。
 
 
来年もよい月夜が巡って来ますように。

 

 

 

 

 

 

2009。10。5

 

十月四日(旧暦:八月十六日)
月の出 午後五時過
月の入 午前五時半過

 

 

 

 

 

 

夕方まで働いての帰り、職場の駐車場では夕日の沈むのを最後まで眺めた。
自宅まであと少々の場所では東の山際がほの白くなっていることに気づき

車から下りて、月の出を待った。

 

 

 

 

 

 

十六夜とはいえ、本日が望月。

まんまるの大きな大きな月がみるみるうちに山の端を離れ、空のものになった。

 

 

 

月代や大き車に大き窓

 

十六夜の月に呼ばるるまずめかな

 

やや寒や人影絶えし谷の橋

 

山の端の月の速さを眺めをり

 

月出でしことどなたにも告げぬまま

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。6

 

十月五日(旧暦:八月十七日)
月の出 午後五時半過
月の入 午前六時半過

 

 

十五夜、十六夜はきれいに晴れたのにまたも雨。

台風という話も。

 

 

立待の光含みし霖雨かな

 

月の雨茶箱の本に棲むトロル

 

 

 

久しぶりに開く本には尻尾があったり角があったりする旧友がたくさんいて、

なかなか現実世界に帰らせてくれない。

ことに『風のうしろのしあわせの島』に行った日には。

 

 

 

 

 

 

※『風のうしろのしあわせの島』クリュス著の児童文学。

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。7

 

十月六日(旧暦:八月十八日)
月の出 午後六時半前
月の入 午前八時前

 

 

 

居待月空いかばかり高からむ

 

 

 

月の南中がどんどん遅い時刻になってゆく。
しかも今日も雨。
居待だが立って、雨はどのぐらいかかって

地上にたどり着くのだろうか、などと考える。
普通は飛行機よりも低い位置の雲から降ってくるので

約七分という答えがインターネットの中にあった。
四百二十秒の旅の最後の一秒を切り取ったわたしの手のひら。

 

 

 

さよならもいはず乾びし月の雨

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< ちょっとだけ号外 >>

 

わたしの参加するインターネット句会が主催者の都合で少々滞っている。

どうしてそうなったのか、主催者から連絡があった。

彼女が何も言わないのは何もいえないほどの何かがあるからだろうと思っていたので、

声を聞けてほっとしている。

声に出すまでしんどかったろうに、と思う。

 

 

 

しばらくは花野に遊べ月の客

 

 

 

前略月の主さま、わたしたちは遊んでいますから、用があったら呼んでくださいね。

月は春夏秋冬空にあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。8

 

十月七日(旧暦:八月十九日)
月の出 午後七時過
月の入 午前九時前

 

 

 

昨年も臥待月の日(昨年は九月十八日)に台風の心配をしている。
今回の一つ目小僧は大きい。
こんなに寒いときに台風だなんて。

 

 

 

一つ目小僧とすれ違ふ寝待月

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。9

 

十月八日(旧暦:八月二十日)
月の出 午後八時前
月の入 午前十時前

 

 

 

本は雑誌でも買うときにはかなり慎重になる。
一番困るのはとっておくことが好きだということで、

好きだとわかっているからとっておかないために買わない。
(本屋勤務のセリフとは思えない)
でも毎月購読したい雑誌もあるので、気がつけば雑誌の山。
一年か二年に一度、突発性捨テルンダ症候群に罹患し

「いらないものを処分する」ではなく「いるものだけを残す」という作業に没頭する。
今がその時期のようで、月詠んで、子らのことで忙しく、

仕事もばたばたして台風まで来るこんな時にしなくてもいいのに

座り込んでたまった雑誌をぱらぱらめくったり、

ここ一年袖を通していない服をひろげている。
ああ、置いておきたい気もするけれどけれど・・・、



更待やお目目のかたき籠の鳥

月の海より流れ来し秋の黴


 
・・・・うん、処分しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。10

 

十月九日(旧暦:八月二十一日)
月の出 午後九時前
月の入 午前十一時前




きららの雲のその上の虧月かな



盈月(えいげつ)がまるくなってゆく月であるのに対し、

虧月(きげつ)は満月から新月に向かう月。
真夜窓から首を出して探す。
空は薄雲が流れている。




どこまでの宇宙三七月ぷかり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。11

 

十月十日(旧暦:八月二十二日)
月の出 午後十時前
月の入 午後十二時前




半分はアメリカへ遣るけふの月



月の出はどんどん遅くなっている。
空はすっきりと晴れた。
すぱっと真半分に切ったような月と向かい合う夜半。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。12

 

十月十一日(旧暦:八月二十三日)
月の出 午後十一時過
月の入 午後一時前


月が朝のものになってゆく。
めったにない全員が休日の朝はとても静か。




有明や皿をはみ出すパンケーキ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。13

 

十月十二日(旧暦:八月二十四日)
月の出 −
月の入 午後一時半過




  ランドセル隠るる小薮下り月



隠れん坊ならいいのだけれど、もう始業のチャイムが鳴っていたり。
実際は隠れている児よりうろうろしている児がけっこういて、

声をかけようかかけるまいか考える。
遅れてでも学校に入る率が高いのが救い。
学校が大好きな児でも一度は二度そんな日はあるのだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。14

 

十月十三日(旧暦:八月二十五日)
月の出 午前零時過
月の入 午後二時過




山しづか月待つ心持て眠る



句会で街にいた。
かなり冬に近い上着を抱えて。
それでも帰路、山の中の駅を通過する頃から寒くなり、

自宅最寄駅では上着の前を閉じても寒かった。
月も凍えながら出るのだろうか、あの山のあたりから。
23時を過ぎた駅前の電話ボックスの中にいた

半袖半ズボンサンダル履きの少年はどうしたろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。15

 

十月十四日(旧暦:八月二十六日)
月の出 午前一時半前
月の入 午後三時前




有明や目薬受くる頭蓋骨



そんな気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。16

 

十月十五日(旧暦:八月二十七日)
月の出 午前二時半
月の入 午後三時半前

 



とりどりのカップソーサー朝の月




青空。
それぞれのマイカップの中身は

琺瑯の鍋でいれたジンジャーミルクティー。
ぬくもりが嬉しい朝。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。17

 

十月十六日(旧暦:八月二十八日)
月の出 午前三時半過
月の入 午後三時半過

 

 

 

つとめての月の匂ひの霖雨かな

 

 

 

すこしだけ湿っている空気。
雲の向こうの細い細い月を思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009。10。18

 

十月十七日(旧暦:八月晦日)
月の出 午前四時半過
月の入 午後四時半前

 

 

 

八月晦日木犀の薄明かり

 

 

 

今日は九月朔日。昨夜(今朝)が八月最後の月。
また太陽が月に追いついて、新しい月が始まる。

 

 

 

 

 

 

>゜))))彡

 

 

 

おつきあいいただいた皆様、一ヶ月ありがとうございました。

後の月も晴れますように・・・・。

 

 

 

 

 

2009。10。31

 

十月三十日(旧暦:九月十三日)
月の出 午後三時前
月の入 午前二時半前


 

 

百の窓開く百の手十三夜

 

 

 


後の月でした。
思い立って「今日が後の月」とお知らせした方々が皆様の空の月のことを教えていただき、
一緒の月を見ているのだ・・・と感無量。
思うより細身の十三夜月なのは、月齢が追いついていないからで、十三夜月といいつつ
大きさは十二夜並です。(この月の望の月は旧九月十五日ではなく十七日、文化の日。)

 

 

 

  十三夜やはらかなもの身にまとひ

  さやさやと梢を濡らす後の月
  
  ぬる燗の錫のぐい呑み名残月  

 

 

 

  

 

 

 

 


十五夜も後の月も晴れ、今年もよき月見でした。
ありがとうございました。

 

 

 

また、来年。

 

 

 

 

Photo / 句: 坂石佳音

2009

 

 

メールはここにゃ