【月見れば】よべのつき
二〇〇七年 喫茶『つぶやく堂』にて
![]()
あちこちうろうろしているわたしのホームのような場所。
床磨きもいろいろのお掃除もお手伝いしますから
大あばれしても許してくださいね、
店主のやんま.さま。
えっ?もう慣れた?
シツレイシマシタ。。。
![]()
2007.9.11
今年、8月28日は皆既月食だった。
残念ながら仕事、
でも、がんばって早く仕上げれば
半分だけでも観ることができそうだと、
職場の皆様の協力の大急ぎで仕事を仕上げた。
帰路は曇天。
風が出て、雲流れ、雲流れ、
時折顔をのぞかせる月は少しづつ大きくなっていた。
八月二十八日皆既月食
汝の影も食の一片盆の月
あの暗いところはわたしの影、あなたの影。
飽きず眺める空。
やがて食終わり、現れた満月に挨拶。
今年も一緒に遊んでくださいね、と。
本日、旧暦八月朔日。
見えないけれど、もう空には今日の月がいる。
明日よりはじめます。
やんまさま、よろしくお願い申し上げます。

![]()
2007.9.12
九月十一日(旧暦:八月朔日)
月の出 午前五時頃
月の入 午後六時前
「今年もよろしく」と空を見る、午後二時。
月はどのあたり?月は雲の上、西に傾き始めた頃、多分。
わたしは句会に行く途中。
ついておいでと新月にこゑかけて
終電一歩前に帰宅。
追い越されたね、いつの間にか。
![]()
2007.9.13
九月十二日(旧暦:八月二日)
月の出 午前6時頃
月の入 午後6時半前
二日月紅差し指の絆創膏
月の頃になると、秋の花を探しに出る。
萩、月見草(本当はマツヨイグサ)、
まだ天を向いている穂のススキ、
その根元にしか生えない花を。
南蛮煙管(ナンバンギセル)は葉緑素を持たず、
ススキのや茗荷の根に寄生して花を咲かせる。
キセルのような形からその名がついたが、
首をかしげた姿からついた別名の『思ひ草』の名も好きだ。
わたしの紅差し指(薬指)の絆創膏は、
思い草に今年も出会えた勲章。
上を向いたり下を見たり忙しいね、秋。

![]()
2007.9.14
九月十三日(旧暦:八月三日)
月の出 午前7時頃
月の入 午後6時45分
初月や女三代並む厨
涼しくなって、食欲が出てきて、あれも食べたいこれも食べたい、
あれも食べさせたい、これも・・・・・。
おいしいものをたんと並べて、
ああ、嬉しい。
パン捏ねる男の腕三日月
作ることも食べることもあたたかい。
手を合わせて、いただきます。
![]()
2007.9.15
九月十四日(旧暦:八月四日)
月の出 午前8時前
月の入 午後7時過
大ぶりの揃ひのカップ四日月
二人?三人?それとも大勢。
あたたかいものの嬉しい季節になってきた。
冬でもアイスコーヒーの好きな人には・・・
やはり好きなものを準備しましょうね。
西の空に繊月。
お茶請けは何がいいかな。
![]()
2007.9.16
九月十五日(旧暦:八月五日)
月の出 午前9時前
月の入 午後7時半過
五日月運動場の得点板
運動会はお祭り。
勝っても負けても雨が降っても怪我がなくて楽しかったらいい。
真剣な顔の、にっこり笑顔の写真を現像しよう。
![]()
2007.9.17
九月十六日(旧暦:八月六日)
月の出 午前10時前
月の入 午後8時過
よく当たる銀剥がし籤六日月
カランカランカラーンと鐘の音。
「おめでとうございます」とお姉さんの声。
久しぶりに寄ったアイスクリームショップは秋のハロウインフェアで、
購入金額に応じて籤を発行していた。
なにがあたるの?あんなに鐘が鳴ってるから、
もう当たりはないかもしれないね、と言いながら、十円玉で銀はがし。
ハズレ・ハズレ・ハズレ・・・・あ、当たり!!
「このカップ、わたしがつかっていい?」と妹、
「ええんちゃう?」と兄貴。
店を出れば西の空に六日の月。

![]()
2007.9.18
九月十七日(旧暦:八月七日)
月の出 午前11時前
月の入 午後8時半過
七日月子の絵の夜に浮かびをり
暑かった。
つい先日「肌寒いので長袖を」などと話していたのが嘘のような暑さの日中。
でもさすが秋、日が落ちれば涼風、窓の外の闇より虫の声。
![]()
2007.9.19
九月十八日(旧暦:八月八日)
月の出 正午前
月の入 午後9時半前
八日月太平洋に流す瓶
届くかしら。
遠くに。
![]()
2007.9.20
九月十九日(旧暦:八月九日)
月の出 午後1時前
月の入 午後10時過
六尺の歴史年表上り月
社会科は苦手だ。
長い長い時間が二メートルに満たない紙の上にある。
隙間が気になって、・・・やはり苦手だ。
覚える作業が嫌いというのはナイショ。
![]()
2007.9.21
九月二十日(旧暦:八月十日)
月の出 午後1時半過
月の入 午後11時過
夕月や拳も頬も痛くつて
さすがに殴り合いはしたことがないが、はたき合いはしたことがあったと思う。
誰となのかはもう忘れてしまったけれど、二人とも泣いたことは覚えている。
子供もよくケンカしていた、男の子らは殴り合って泣いて、また一緒に遊んでいた。
![]()
2007.9.22
九月二十一日(旧暦:八月十一日)
月の出 午後2時半
月の入 −
ぽつたりと落ちさう十一夜の月真赤
西に傾く月におもわす歓声。
赤、秋の色。
![]()
2007.9.23
九月二十二日(旧暦:八月十二日)
月の出 午後3時過
月の入 零時過
一葉のために磨る墨宵月夜
ほっと落ち着くと、手紙を書きたくなる。
なにを書こうか。
ちょっとだけ、ちょっとだけ。

写真は田代田氏にお借りしました。ありがとうございます、田さま。
![]()
2007.9.24
九月二十三日(旧暦:八月十三日)
月の出 午後4時前
月の入 1時過
月やさしジェットコースターの輪のむかう
テーマパークの夕暮れは、あちらこちらと灯がともり、
乗り物のイルミネーションもひとつ、またひとつと。
「そろそろ帰ろうか」「ううん、もうちょっと」と結局は閉園まで。
おやすみなさい、ジェットコースター、
おやすみなさい、メリーゴーランド、
おやすみなさい、お月さま。

![]()
2007.9.25
九月二十四日(旧暦:八月十四日)
月の出 午後4時半前
月の入 午前2時半前
月の雨焔の花の立つ畦も
いつまでも暑い。
「いつになったら秋になるの?」と本屋のお客さま。
でもね、秋です。
其処此処に秋を忘れずに顔を出している秋の松明。
こわくてきらいだった深紅、彼岸花。

今夜は十五夜、名の月の日です。
ただ、今日は望月ではないので、ちょっとだけ小さい名月。
明後日の望月までますます円い大きな月を楽しむ事のできる、お得なお月見です。
雨が降りませんように。降っても晴れますように。
![]()
2007.9.26
九月二十五日(旧暦:八月十五日)
月の出 午後5時前
月の入 午前3時半過
昨夜は十五夜。
夕刻の秋驟雨に磨かれた空に望月には少し足りないけれど真白の円い月。
仕事からの帰り駐車場でこの頃よく会う猫とごあいさつ。
きれいな月夜ですね、と。
明月や半分野良で隻眼で
夕食に月見団子が無いのが釣り人には少々さびしかった様子。
作ったお団子はあったのだが、彼にとっての月見団子は紡錘形の白い団子に
帯のように漉し餡が巻かれているもので、昨日はわたしが仕事だったので出遅れて
買いそびれたのだった。今日もあるかしら、あったら買ってくるからね。

いろいろを済ませて、いざ、お月見。
一度外に出たら思いのほか寒かったので、上着をかぶって出直し。
月皓々膝を抱へて眺めをり
十五夜の少し隙ある月の端
しばらくの無音良夜の女どち
三五月無口の草を照らしをり
どの星もしづかに光る良夜かな

<田氏フォト>
静かだったのはここまで。
「あの模様が兎だろうか」とか、「月には本当に空気が無いのか」とかあれこれと。
明日も学校の子は早々に退散、わたしはもう少しお月見をと思ったが、
冷えてしまったので窓越しの月見に変更。
月好みさうな瓶置く夜半の窓
瓶の中に落ちてくれないだろうか、つかまってくれないだろうか月、と。
結果はないしょ。
屋根瓦みな濡れてゐる月夜かな

![]()
2007.9.27
九月二十六日(旧暦:八月十六日)
月の出 午後5時半前
月の入 午前4時半過
十五夜よりもまだ円い月。
明るい月。
上空は風が強いらしく、高い雲、低い雲がそれぞれの速さで流れる。
彩雲の生れては消ゆる月の前
十六夜や大きく狂ふ鳩時計
ふと気づくと二時間も狂っていたわたしの時計。いつの間に?
月の夜は何があってもおかしくはないのだけれど。

![]()
2007.9.28
九月二十七日(旧暦:八月十七日)
月の出 午後6時前
月の入 午前6時前
昨日、望月。
立待ということで、十五夜より月の出が一時間遅い。
午後から雲の多い空で、月を見ることができるのか心配。
見たいなぁ、月。
立待や左手で掻く右の肩
十七夜つねより猛き雲の列
夕食を終えなにもかも落ち着いた頃、空が動き中天に真白の月、満月。
外に出る。
月今宵手帳に落つるペンの影
山鳥の月光近く寝ぬるかな
満月に向かひメールを飛ばしけり
このまま月の光の中で眠ってみたいけれど、きっと風邪をひく・・・とあきらめた。

月:田氏photo
今朝は月に一度の病院の日。
秋ほろほろグレーチングの隙間にも
昨夜の月残る草間の小瓶かな
あ、逃げた。

![]()
2007.9.29
九月二十八日(旧暦:八月十八日)
月の出 午後6時半
月の入 午前8時過
軟膏の馴染みの匂ひ居待月
秋霖や枕を叩くおまじない
待っていたのだけど、結局雨の夜。月から降る雨。
![]()
2007.9.30
九月二十九日(旧暦:八月十九日)
月の出 午後7時過
月の入 午前8時半前
銀色の鉛筆削り寝待月
月うさぎ皆大の字の雨夜かな
気がつけば二十五年も使っている鉛筆削り。
どうして覚えているって?もうひとつ二十五年があるから。

![]()
2007.10.1
九月三十日(旧暦:八月二十日)
月の出 午後8時前
月の入 午前9時半過
カステラに端つこ二つ夜半の秋
亥中月インコもねごといふんだね
夜が長いので、ちょっとつまむものがあると楽しい。
長いものを切り分けるとき、端っこをこころもち大きめに切る。
切っているはしから「端っこ、ちょうだいね。」の声が聞こえてくる、いつも。
あたたかいものを淹れて、
いただきます。

![]()
2007.10.2
十月一日(旧暦:八月二十一日)
月の出 午後8時半過
月の入 午前11時前
三七の月ポケットにとんぼ玉
宵闇なのか、曇っているのか、虫が静かなのでこれは曇り空かな。
雲の向こうの月におやすみなさい。

![]()
2007.10.3
十月二日(旧暦:八月二十二日)
月の出 午後9時半過
月の入 正午頃
降り月フルマラソンに小数点
だんだん痩せてゆく月。半月でもなく、
三日月のような繊月でもなく、ちゅうぶらりん。
夜更けて上る降り月は夜更かしさんの友達の月です。
そして早起きさんの友達でも。
![]()
2007.10.4
十月三日(旧暦:八月二十三日)
月の出 午後10時半過
月の入 午後1時頃
半月や海より深き神の杯
美しき半球、金色の半球。
月を欲しがった姫さまと道化のおはなしがある。
お話の内容は覚えていたがその本は子供の頃に図書館で読んだのでタイトルがわからず
それでも大好きでずっと心にかかっていた。
この秋、その本を見つけた。
乾杯。

![]()
2007.10.5
十月四日(旧暦:八月二十四日)
月の出 午前零時前
月の入 午後2時前
宵闇やあなたの雨の今届き
夜更かししたらお寝坊しますよ、
わたしはもう限界、ああ、目を閉じればすぐに夢の中。
おやすみなさい。
![]()
2007.10.6
十月五日(旧暦:八月二十五日)
月の出 −
月の入 午後2時半過
星月夜魚の形の山の影
昼間はよくわからないけれど夜はくっきりと大きな尾びれ。
おーい、さかなーっと呼んでみる。
![]()
2007.10.7
十月六日(旧暦:八月二十六日)
月の出 午前一時前
月の入 午後3時過
鳥籠のかなしきたまご残り月
セキセイインコを一羽だけ雛鳥から飼っている。
籠の中にまるいものがころり。
お月さまの色でした。
![]()
2007.10.8
十月七日(旧暦:八月二十七日)
月の出 午前2時前
月の入 午後3時半過
朝月やひらひらひかる箒の柄
いつもは学校に行く前の朝のお仕事。
おはようございます、おはようございます、赤いランドセルは今日はお休み。
さあ、何をしようか。
![]()
2007.10.9
十月八日(旧暦:八月二十八日)
月の出 午前3時前
月の入 午後4時過
明時や雨に鳴く虫鳴かぬ虫
彼誰時に目覚めると、虫が鳴いていた。
どれも『今』という名の歌だ。
わたしたちの耳には聞こえない声で歌う虫もたくさんいるのかもしてない。
本当は。
![]()
2007.10.10
十月九日(旧暦:八月二十九日)
月の出 午前4時前
月の入 午後4時半前
有明や昨夜も眠らぬ抱き人形
人形にも色々とあって、寝かせると目を閉じる人の形のものからぬいぐるみまで、
どれも人形と呼ぶ。
娘は生まれてからずっと人形まみれのベッドで眠っている。
四歳違いの兄は小さな妹には人形が必要だと思ったようで、
産院から退院した夜から彼女の寝床にいろいろと人形を並べた。
しかし、そろそろおわかれのようで、でもまだひとつだけ、まだお別れしたくない
大きな犬のぬいぐるみが彼女の夜を守っている。
有明、もう、月は見えない。
![]()
2007.10.11
十月十日(旧暦:八月晦日)
月の出 午前5時前
月の入 午後5時前
汁物にとろみ八月晦日かな
夕餉はあたたかいものを。
新月の頃はまだ半袖で出かけ、冷たいものが嬉しかった。
月はあの山の向こう、地球の裏。
黒の椀、朱の椀、大皿にも湯気立てて、
卓を囲んで「いただきます」。
☆彡
目覚めて雨、ガラス窓の外は昨夜よりまだ冷えているよう。
お日さまに追いかけられている見えない月はきっとあのあたりと指差す朝。
黎明や月のにほひのミルクティー
月が欲しい姫に道化は問う
「月は何で出来ておりますか」と。
姫は答える、「金よ」と。
金で小さな月を作ったものの、夜空にはまた月、
あわてた道化に姫は笑う、
「当たり前でしょう?毎日新しい月が生まれるのは。」
年月を重ねるほど思う、
いつもいつも今日が新しい。
今年もおつきあいいただきありがとうございました。
![]()
2007.10.24
昨夜は後の月、十三夜でした。
よべのつき、おまけ。
湯上りのあはきかほはせ十三夜
十三夜どこかでをとこ咳をする
後の月爪立ち歩む夢の端

月:田氏photo
Photo / 句: 坂石佳音
2007.Oct