かのんのキョロキョロ日記
十五夜 ― 二〇〇三年 ― 上野城観月薪能 ―
昨日は仲秋。
ここ数年、毎年仲秋の夜は上野城の薪能に参ります。上野城の本丸広場にシートと椅子が準備され、城を背に能舞台が設営されています。
天守には忍びの者もいるかしら、それとも天守には・・・
美しき魔も訪ふ観月の天守かな
今年は仲秋が例年より早いので・・・というお話でしたが、それよりもやはり冷夏の後遺症と残暑のせいでしょうか、灯に蝉がブンブン飛び回る観月能・・・。そして暑い。
ここに風ひとつ生れたり秋扇
とにかく暑いので、扇、団扇が役に立ちました。舞台の上はそうはいかないのですが。その暑い中、火が入り、薪能がはじまりました。
髪も目も飲むも黄金の月見客
説明が、なかなか大変なのは外国からのお客さまも子供も同じ。
でも、同行のわが娘は狂言がお気に入り。
名月や一つ覚えの太郎冠者
金春流能 『三井寺』、大藏流狂言『清水』、観世流能『鐘馗』と進むも、空には雲が広がっており、月は見えず。
遠雷にためらひたまふ今日の月
しかし幸いなことに雨は無く、今年も無事幽玄の美を楽しむことができたのでした。
帰り道には月が待っていました。
「でたでたつきが・・・」と歌いながら帰りましょう。
あの月に銀鎖かけむと小さき者
風の窓開けて走らむ月の道
鎖なんてかけなくても大丈夫。月はあなたが好きだから、ほらね。
ついて来て入れぬと泣く三五月
深夜、ひとり、天心の月に逢う。なんて明るい。
月盗人月に盗まるあぎとかな
やはり、今年も月には叶わないのでありました。
かのんのキョロキョロ日記(十五夜)でした。
十六夜 昨夜、城の宴果てて・・・・
十六夜月は雲ゐながら時折顔をのぞかせてくれました。
十六夜の月無し待つは黙ること
二八月きざはしに母ひとりをり
昨夜のこと、薪能の後、まっすぐ帰るわけの無い二人組はそのまま、街灯の無い真っ暗な場所をさがし、車のライトを落として、
「でもあかるーい♪♪」
などと遊んでいましたが、ふと思いついて、夕刻往路で見た鷺百羽の
(多いということ)川を見にいきました。ここも闇に月の光だけ。
でも川岸の木々にあかりが灯っている、と娘は言います。
やがて目が慣れてくると
「あ、ちがう」
と気づきました。月明かりに浮かぶ、眠る白鷺です。
「たまごのようね・・・」
しばらく二人でながめておりました。
五位鷺教授半眼の良夜かな
川鵜も真っ黒に眠っていました。
かのんのキョロキョロ日記(十六夜)でした。