青山ちょっと吟行

 

酒蔵祭・初瀬街道祭

 

 

 

 

 

啓蟄や日ごとに映ゆる魚の背  佳音

 

 

早や啓蟄、ただし、こちらは先ほどまで吹雪いていた。
この冬は本当に雪が多く、気温も低く、花も昨年の写真を見て比べるとかなり遅いような。

三月の第一日曜日は毎年最寄り駅近くの阿保(あお)の酒蔵、

若戎酒造の『酒蔵祭』がある。
今年はいつも行く大阪の新聞屋さんの句会の句友三人がやってきた。
前日までの寒さが嘘のようなあたたかさで、大阪からの長い車中、

カイロ貼り大会をしてきたという三人はちょっと暑そう。
でも、寒くなるかもしれないから、とそのまま出発。


阿保は伊勢への道、初瀬街道の宿場町で、ここ数年、『酒蔵祭』と同じ日に
『初瀬街道祭り』も開催され、まことに吟行向き。


 


  とらちやんのめがね角刈り春祭  佳音


 

おなじみさんに挨拶をして、まずは酒蔵祭へ。

 

 

 

 


昨年までは蔵の中の中まで見せてもらえたのが今年は入り口での試飲と
大型テレビで酒造りの説明だけに変わっていたのが少々残念だったが、
出された「今朝搾り」と「春にごり」は客人の口にもあったようで

(彼らはどんなお酒も好きという話も・・・)早速お土産に買ったり。
他にも苺色のピンクの甘酒、粕汁のふるまいや、蕎麦打ちの会に
よる蕎麦の販売(おいしかった♪)、農産物や伊勢からの牡蠣の販売もあり
南京玉簾や皿回し、太鼓の演奏と目も耳も口も大騒ぎ。
その中でわが客人が牡蠣を買って食べるという。(もちろん我が家で調理。)
箱に詰め放題で千円とのことで、「では詰め放題大好き主婦の佳音が詰めましょう」
と腕まくり。「お祭りや」と笑うおじさんに甘えて、ああ、詰めた詰めた。
写真で箱の蓋が盛り上がっているのがわかるだろうか。ごめんね、おじさん。

 

 

 

  

 

 

 

  

 


酒や牡蠣やをぶら下げて、一行は『初瀬街道祭』へ移動。
何故って、獅子舞を見て餅つきを見て、お餅もいただかなくてはならないから。
普通の杵ではなく、細長い棒の杵を使う「千本杵餅つき」は、搗き手が皆で
歌を歌いながらどんどん餅をつく。(七臼搗いたらしい)

 

 

  

 


餡餅、きなこ餅両方をいただき、おなかもいっぱい。獅子舞を見て
心もいっぱいになって、次の目的地、大村神社への坂を上った。


  おそ春やうたひ上げ搗く二升餅   佳音

   はこべらの道吸殻をきゅっと踏む    梅艸

   うららかやそうっと覗く要石      稚光

   虫食ひの鐘の音春の空  をみな (鐘:つりがね)

 





坂の途中、街では見ることのない草や花や古い看板にカメラを向けたり
小さなお堂をのぞいたり、荷物の重さも上り坂の苦労も忘れているような客人たち。
大村神社でも疲れを知らぬ一行は覗いて覗いて撮って撮って、「こうなったら
高原も行っちゃおうか・・・ただし車でね」、というわけで、一度我が家まで
来ていただき、車で20分の青山高原山頂までランドクルーザー80でひとっ走り。
残雪を見て、風力発電の風車を見て・・・句は詠めた?などと笑いつつ
また我が家へ。


 



さて、句会、ではなく、牡蠣、牡蠣。

「あ、生きたままフジツボがついている!!」、などと騒ぎつつ洗って
数えたら71個もあった牡蠣は鍋に入れ、何も入れずに火にかけて蒸す。
ポン酢をかけてもいいが、そのままで十分おいしい。

 

  

 

 

 

ふじつぼのちよろと脚出す春日かな  佳音


「おいしいおいしい」と鏡の国の国のアリスのセイウチ氏のように

牡蠣の殻の山を作り、わたしの準備したおでんや
なにやかやを食べて歓談した。気がつけば、お土産のはずの瓶の封が切られ
立っているし、入っていただいた部屋にはわたしの遊び道具が色々あるので
笛を吹いてみたり、水道管を吹いてみたり・・・・で、句会は?

しました。
一人四句出し、天地人計六句選♪
そののち、本日歩いている途上で気になった『まちこ美容室』という名前を
詠みこんでの一句づつということもしたり、飲んで食べて詠んで読んでの
たいそう楽しい一日でありました。

 

 

 


三人が帰って、翌朝はまた氷点下。雪もひらひらと降り、あの一日の好天は
なんだったの?と。
たぶん、このあたりの八百万の神さまも遊びにいらしていたのかな、
春兆す里に。


   陽春や村の祠に人のこゑ  佳音


牡蠣、さすがに半分ほど残り、

それらは我が家の牡蠣好きのおなかの中におさまりましたとさ。

ごちそうさまでした。

 

 

 

 

(梅艸さま、をみなさま、稚光さま、句会の句を使わせていただきました。

稚光さま、わたしの写真、ありがとうございます。)

 

 

写真/文/句:坂石佳音

2008.3.5 wed

 

 

 

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