かのんのキョロキョロ日記

    増殖する俳句歳時記 八周年記念句会編

    2004.7.31()1300より

    『俳句文学館』

     

    清水哲男氏の『増殖する俳句歳時記』を友人に紹介する時、

    「YahooでもGoogleでも『俳句』と入れて検索すれば、最初に出てくるよ」

    と伝えます。

    『増殖する俳句歳時記』はインターネットで俳句を、という人が一度はご覧になる

    ページではないでしょうか。

    半年前、その『増殖する俳句歳時記』(以下『増俳』)の中に、八周年を記念して、

    最初で最後の句会を人数限定にて開催するとの告知がありました。

    そして、私は後先考えずに「はいはーい!!」と参加に手を挙げたのでした。

     

    やがて、参加者のための掲示板が開設され、そこには「あと○日」のカウントダウンも

    始まりました。その数字が三桁だったのが二桁となり、やがて一桁になる頃、

    日本の南の海上に不穏なぐるぐる。

    半年も前から清水氏が心配しておられた『台風』です。

    清水氏はなんといっても雨男、タバコを買いにお出ましになられても雨が降るとか

    降らないとか。今回は北は福島南は宮崎から集まる皆様のためにも雨にする訳には

    いかない、ましてや台風なんて。

    そこで強力なてるてる坊主を作ったりしてみたのですが、どうも怪しすぎる空模様。

     

       カコンカコン三角乗りの夏台風

     

    結局当日まで台風は和歌山の南あたりで自転車の整備をしていたようです。

    ところが、句会の始まる時刻に近づき、メンバーが俳句文学館に集まるほどに

    天気の回復する東京地方。13時にあと少しの時刻に我々が会場入りした

    頃には、心地よい風が吹き、時折太陽が見えていました。

     

      

     

     

    受付にて「もう始まりますよ」と名札と記念品のTシャツを受け取り中に入れば、

    中央の演台に清水氏、氏の左側のホワイトボードには選句用紙提出の〆切時刻が

    記されており、見回せば壁際にどどっと椅子が並び、七十人引く我々の人数の

    皆さまがすでに着席されて、ぎりぎりセーフ(?)組は椅子を取りに今一度

    部屋の外に退出したのでした。

     

       野分過ぐ椅子七十を並べけり

     

     

     

    今回の句会、お題は「水中花」と「八」でした。投句はメールにて早々に済んでおり

    清記もメールにて百二十六句の一覧が手元に届いています。今日は事前に選んだ

    天一句、地二句、人三句を投票用紙に記入し、提出するだけ。

    選句〆切は十三時半、テーブルに並んだビール瓶が汗をかきはじめた頃、選句の

    投票は締め切られ、投票箱は集計のためスタッフのもとへ。

    結果を待つ間清水氏ご友人大串氏の笑顔と「乾杯!」の声により宴が始まりました。

    今日はじめてお会いするかた、以前お会いしていて久しぶりのかた、会場の端と

    端で小さく手を振ってみたり、きゃーっと声があがったり。

    その間、清水氏は本の山を前にサイン・サイン・サイン。

     

    歓談を中断しての披講はスタッフの騒々子氏、ぽつりぽつり八分の一歩ほど脇道を

    行くような語りをまじえながら、上位十位までを発表。

    一位はスタッフの三毛氏の

     

       水中花もういくらでも待つつもり   土肥あき子

     

    でした。

    賞品は今回の季題、「水中花」にちなみ、湯の中で花のように開くお茶、『茉莉茘枝』

    (モーリーリージー、ジャスミンティーです)のようでした。

    十位まで揃った後、清水氏ご本人より清水哲男の十選の発表です。

    こちらの賞品は増俳オリジナルマウスパッド、なんて羨ましい。

     

       夏句会拍手の毎に逃げるペン

     

    うなずいて、笑って、拍手して、時がたつほど話し声はかろやかになり、ビールの瓶も

    かろやかになり、会場はほの赤く染まった笑顔がいっぱい。

    青き衣の歌姫のオペラ仕立てにうたう芭蕉の句もあり、あちらこちらで記念撮影や

    勝手に撮影(ワタクシデゴザイマス)に盛り上がっている時、集合写真の撮影の声が

    かかりました。段も無いのに七十人もどうするのかと思えば、スタッフの蝉息氏のお顔が

    会場後方上部、映写室の二つの小窓のうち一つからほっこり覗いている。

     

     

    七十人は右往左往、「ここははいるのー?」「無理―?」などと言いつつもにっこり

    記念撮影を済ませました。

     

     

    楽しい時間はどうして早く過ぎるのでしょう、いつもおしまいを告げる役目を誰かが

    負わなければなりません。

    「宴はもうおしまいです」のかわりに、清水氏は一編の詩をつぶやきました。

    その詩の作者、天野忠氏の 「真似だよ」 とおっしゃって。

     

    ・・しんねんのこえ・・・・・・あまの・・ただし 

     

    これでもう 

    七十年はいきてきたわけやけど

    ほんまにいきたっちゅんは

    十年くらいのもんやろか

     

    十年もないやろなぁ

     

    七年くらいのもんやろか

     

    七年もないやろなぁ

     

    五年くらいとちゃうか

     

    しょうみが五年

    それも心細いなぁ

     

    ぎりぎりかぞえて三年

     

                                                            ・・・・・・・・

                                                           

    おくのおくのほうで・・・しょうみがうめいた

     

    ―― そんなに 削るな。

     

    ゴミは各自片付けましょう、椅子は?机は?

    次の宴の場所に、家路に、それぞれ会場を後にしました。台風の洗った青空の下、

    お土産の『水中花』をひとつずつ連れて。

    また必ず会いましょうと手を振って。

     

     

     

    最後になりましたが、

    これは私の勝手な記録です。

    失礼ながら敬称も省かせてていただきました、詩も、私の耳の記憶のまま

    記させていただきましたことをお知らせして、誤りがあるであろう失礼を

    お詫び申し上げます。

     

    七十の水中花のうちひとつは今ここで咲いています。

    残りの水中花はどうしているのでしょうね、清水さま。

    また、知りたいとお思いになりませんか?

    来年もさ来年も、その先も。

    七十の水中花みな、そう思っています。

    続もその弐も膨張も思いのまま。

    そう、

     

    ―― 十年経ったからって 削るな。

    かのんのキョロキョロ日記でした。




                            2004.8.3  Photo / 文 / 句: 坂石佳音




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