あのね、冷蔵庫がね

    −れいぞうこでんきあってもただのはこ−

     

    2004年2月〜3月

     

     

     

    むかしむかしよりはちょっと、いいえ、ずいぶんと今に近い何年か前、
    あるお家の冷蔵庫が壊れてしまいました。
    長い間使っていたし、お引越しも二度しているので、その冷蔵庫には
    さよならをして、新しい冷蔵庫が空からやってきました。

    どうして空って?

    二階に住まう我々の台所へやって来るにはその新しい冷蔵庫はちょっと
    幅がありすぎました、すなわち階段を上れない。
    そこで、古い冷蔵庫の撤去と新しい冷蔵庫の搬入に、なんとクレーン車が
    やってくることになったのでした。

     

     

     

     

     

    まだ小学校低学年の息子は冷蔵庫搬入想像図を描き、もっと小さな娘は
    クレーン車の先にぶら下がる古い冷蔵庫に「バイバイ」しました。

     

     

     


       冬凪をかきまぜ冷蔵庫の届く  佳音

     

     

    ありがとう、さよなら・・・・    

     


    それから数年、その大きな冷蔵庫は郊外型週一度買物派のかのんさんに
    こきつかわれ、ぐいぐい大きくなる子供たちのご飯の種やアイスクリームや
    時には釣りの餌、釣ってきた魚もごんごん詰め込まれていました。
    冷蔵庫はうーうーうーと働きました、とても機嫌のいい顔で。

    ところが2005年早春のある日、突然、

     

    「うにょーん、しゅー・・・・」

     

    と冷えるのをやめてしまったのです。

     

     

       もう冷えぬ尾のある戸棚冴返る  佳音

     

     

    大変だ!!魚がお肉がアイスクリームが・・・パーティ??? やっほー♪♪

     

    エラーコードを電器店に連絡、部品を取り寄せるのに数日、そしてやってきた
    電器屋さんが切替弁とセンサーを交換しました。

    よっしゃなおった。

     

    「一晩様子を見てください♪」  

    「はーい♪」

     

    でもだめ。ただの箱。
    基盤かな? また部品を取り寄せるのに数日、そして交換。

     

    「あのぉ、一晩・・・様子を・・・見ていただけますか?」  

    「はーい♪」

     

    ・・・あかんやんか。線抜いたろか。

     

    電器を食べる、ただ音のうるさいでっかい箱になってしまった冷蔵庫。
    そしてとうとうメーカーから直接修理屋さんが来ることになったのでした。
    電器屋さんが診療所のドクターなら今度来るのは専門医。

     

     

       茎立やまづ触れて聴くエンジニア  佳音

     

     

    まず冷蔵庫、そして私の話。

     

    「現象はどうでした?」
    「こんなでこんなでこうなって、・・・でした。なおしてー!!!」
    「ふー・・・んー・・・・」

     

     

     

     

    さて、ここまでほぼ十日、冷蔵庫が無くても過ごせたのは、冬であったこと、
    (表は天然氷温、時に冷凍冷蔵庫)そして、三世帯同居なので台所はあと二つ、
    冷蔵庫もあと二台あったからです。
    階下に行っておかずを考え、階段を上って作って、あ、あれが足りないと
    階段を下りて・・・おお!!私、痩せるかもしれない!!!!

     

    結局、コンプレッサーがダメとの見立てで、その交換となりました。
    急ぎに急いで部品を手配していただき、翌日また冷蔵庫ドクター登場。
    わーお、手術ですねといいたいほど器具や用具が並び、さて、執刀です。
    ガスを使うため、部屋は換気。寒い!! でも冷蔵庫相手のドクターはもっと寒い!!

     

     

       鎌鼬冷蔵庫にもあるや耳  佳音

     

     

            

     

     

    ああ、季節と季語が混乱している・・・・。


    着脹れ女の前でどんどん作業は進みます。

    え?!そんなにガツンといっていいんですか?プシュシューッていってますよー、
    うひゃー、みんなはずしちゃうんですね、それも??それもそれも???

    え?!え、えー?????!!☆※!!+×

     

     

     

     

       耳ありてそ知らぬふりの雛かな  佳音

     

     

    無事、なおりました。

    古いのではよくあったけれどこの年代の冷蔵庫ではほぼ初めてのタイプ故障だから

    自分も未経験に近い修理だったと、そして一晩様子を見ないとまだわからないと

    言われてドキドキ。

    普通じゃない故障だったのね、と時間がかかったことも納得。
    開けてみればきっかり冷えている。音も静かになった。

    ああよかった。これでご飯の種もアイスクリームも釣り餌も釣った魚も・・・

    でも、

     

     

       けふ買うてけふ食ぶ幸蜆汁  佳音

     

     

    とも思ったり。買いに行くのもいいけれど、八百屋さんが「やおやでござい!」と

    売りに来て息子と娘が必ず飛び出していったこと、仲良しになって苺をいただいたこと

    など、ほんの数年前のなのに忘れていたことを思い出しました。

     

    それで私が痩せたかって?そりゃあ、もう、階段上ったり下りたり、体力使うから

    ・・・・ああ、ごはんがおいしい♪   はいー・・・・・。

     

     

     

     

    一晩おいて、今朝の冷凍庫はキンキンに凍り、冷蔵庫も思いっきり冷えていました。

    入れてあったワインと牛乳が、ん?凍っている・・・・・・・

     

    冷蔵庫やさーん!!!

     

     

     

     

     

    2005.2.23   坂石佳音

     

     

    おまけのおはなし

     

     

    さて、直ったかと思えば冷凍冷凍庫になっていた我が家の冷蔵庫、その後幾度も

    『冷蔵庫屋さん』に来ていただき、部品交換や点検を重ねるも、カチンカチンに

    凍ったままのワインに牛乳に・・・・。

     

    「お客さまにこれ以上ご迷惑をお掛けする訳には行かないですから」

     

    と、冷蔵庫屋さんの結論は『交換』でした。

    もちろん同じ物があればいいのですが、無くてちょっと新しい型になるとのこと

    (結局最新だったような)で、つまりはまたクレーン?

    いえいえ、前回通らなかった扉は取っ手を交換したりで前回より間口が広くなり

    今回は階段から。

     

     

     

     

    しかし本当にギリギリの幅で、持ち上げる前に綿密な計画と打ち合わせがありました。

    そして四人の人力でやってきた冷蔵庫、とっても元気です♪

    さあ、買うぞー、牛乳、鶏肉、アイスクリーム、冷凍中華ポテト!!!!!

     

    ○゙ョー○ンさん、ナ○ョナ△さん、ありがとうございました♪♪♪

     

     

     

    2003.3月