つばめ、つばめ、
            『2004年の燕たち』

     

     

     

    ドアはそーっと開けること。

    むやみに上を見ないこと。

    あ、ドアのカウベルもはずさなくては・・・・・

    今年は孵るかな。

     

    「ひりょりょ・・・・」

     

    あ♪ 生まれた?

    のぞくのはまだガマンガマン。
    でも・・・・、
     むむむむむ! 

      
      ごはんよー♪

    忙しくて人間にかまう余裕は無いそうです。

    というわけで、ようやく写真を撮らせていただきました。雛は五羽です。

     

     

        子燕のまぶた小暗き真昼かな     佳音

     


    この家が建って六年です。ちょうど今ごろの季節に越してきたので、

    あちこちで燕が子育てをしていました。
    「うちにもきてくれたらいいね」と話していたら次の年、階下の私の

    両親宅のご不浄の換気扇カバーに土。おお♪換気扇使用禁止!!

    ところがそこは雀のお宿になり、燕は育ちませんでした。

    (この写真は一昨年、よその子が私の厨(二階です)の脇にとまっていたのを撮影。)


        
         
       「おまえ、濡れてるぞ」「あン?おまえもや」

     

     

    雨つばめ雨つばくらめ五月かな    佳音

     

    夏つばめ一羽は聞いてゐるばかり    佳音

     


    一昨年、玄関で義母と母とわたしがおしゃべりをしていたら、開けっ放しの扉から藁をくわえた

    燕がすーっと入ってきて、しきりに照明のあたりにアタック。
    嬉しいけれど、玄関扉は「ドア」なので「少し開けておく」というわけにいきません。
    以前お伺いしたお宅では(土間の広いお宅でした)『燕のための窓』があって、三和土の梁に燕の巣。
    わが家はそういうわけにはいかず、困った・・・・。
    それからも何度も(開けっ放しなので)両親の部屋や玄関にやってくる燕、そこで父が軒下に

    板を設置したのです。
    でも、一昨年はからっぽ、昨年はいかにも若夫婦なつがいががんばっていましたが、巣が未熟で

    卵が落ちてしまい残念、そして今年です。
    「フンがある」と喜び、「座ってるよ」とドアが開くと鳴る鐘を外し、
    「たまごのからがおちてたよ」「中身は!!???」
    ・・・・・「ひーひーひー・・・」 

    「やったー♪♪♪♪♪♪♪」(←我が家は七人家族ですので)
    ずーっと来てくれるといいなぁ。

     


       
    はらからの肌の温み燕の子      佳音

     

           
         
           「なあ、このごろ、せまいとおもえへんか?」
           「むっちゃ、せまいわ。」
           「もっとむこういけ!!」
           「あほ!あぶない!!おちたらどないしてくれんねん」
           「そら、ひろなってえーわ」
           「あほか、おまえおとしたろか!!」
           「もうええやんか、じっとしとき、みなめーわくや」
           「むにゃむにゃむにゃ・・・はらへった・・・」

           
          「お?」「お?」「お?」「あ!」「にゃ?」

           

    「♪△※$#★&◇刀∞!!!!!?」

           
           「はあ、やっぱ、せまいなあ・・・」
           「はらへった」

           
           「ところで、さっきからおまえ、だれ?」


    あ、あのあのあの、坂石佳音と申しますぅぅぅ・・・・・
    ・・・・・・・えー・・・・
    失礼しましたー。

     

    //////////////   翌日   ///////////////

     

       あれ?減ってる。むむむむむ!?

       「 ! おとしてへん!おとしてへん!おとしてへん!、なあ。」
       「うん、きゅうにひろなってしもたなぁ」
       「ん?もう めしぃ?」

           


       そして、誰もいなくなりました。

           

    ・・・・・さびしいやんか、
    でもまだ夜は帰ってくれるでしょうか、


             オオヤマレンゲ

     

     

    お昼前、パン屋さんの車がやってきて、ほかほかの焼きたてメロンパンを買いました。

    巣を離れた燕の子は親鳥と一緒に飛び回っています。

    階下の父の庭でメロンパンにかぶりつきながら燕見物。

    皆それなりに飛ぶのですが、あれ?一羽だけ地面にいる。
    きっと一番端っこでいつもおなかをすかせているように見えた子が、勢いで皆と巣立った

    ものの早すぎたのか、親は地面すれすれを飛んで誘うのですが飛び立てません。
    メロンパンが無くなってからも見ていたら遠くに猫。猫は何も悪くないし、

    燕を見つけたわけでもないのですが、私の父が辛抱できなくなりました。

     

    「鴉もいるんだ!!」

     

    とわけの分からないことを言いながら子燕を保護。
    親に見えるように捕まえて、親に見えるように運んで巣に戻して。

     

     

     

     


    すぐに親が飛んできて、餌を与えていました。(ということは、まだ巣立ちには早かった

    のでしょうか)でも、夜はひとりぽっちでした。

     

    翌朝、どこで眠ったのか朝帰りの子供達と親燕が我が家の周りで遊んでいます。
    あの子は、まだ巣の中です。がんばれ。


        つばめの子吻細みたる反抗期   佳音

     

     

    やがて、本当に誰もいなくなりました。

     

     

    夏闌けて軒端に穴のぽかりかな   佳音

     

     

    2004年初夏

     

     

        夏燕夕餉前てふ余白かな    佳音

     

        手花火をきうと鳴かせて了はりけり   佳音

     

    やがて暑い夏を過ぎ、暑い秋。

     

     

     

     

    空深くなりましたよと秋燕      佳音

     

     

     

     

    のど赤きもの集きたる餞暑かな    佳音

     

     

     

     

        その煙草儂にくれろと捨て案山子   佳音

     

    ・・・・・・・・・・・。

     

    つばめ去に空広すぎるゆふべかな   佳音

     

     

     

     

       雲の名をそらんじてみる秋の午後   佳音

     

    かあさんのうたふこゑですほたる草  佳音

     

     

     

     

     

    つばめ、つばめ、また、来年。

     

     


      2004.10.4  Photo / 文 / 句: 坂石佳音




                    メールはここにゃ