義風の俳句手帖

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    『義風の俳句手帖』の中の「俳句手帖」。
    私は義風氏の句のファンですから、時折うふふ、とのぞきます。
    秋ですね、と「秋の句」をクリック、ほら、私の好きな句。

     

     

     

     

     


    かのんのらくがき 『義風の俳句手帖』 1/4


      つまりわが妬心なりけり胡桃割る   義風


    「いきなり上五で「つまりわが」とやったのは当時の私としてはかなりの冒険であった。」(義風)
    冒険してくださってありがとう。
    胡桃の句ではあるが、力のこもった(力強いではない)男の手(これまた大きくて太い指とも

    思わない、でも逞しさのある)がクローズアップされて見える気がする。
    割った後のため息のような息遣いとともに。

       胡桃とは思へぬ実落つ信濃かな   佳音


    三年ほど信州上田の小学生だった。初めての転校、初めてのカルチャーショック。
    銀杏を知っているのだから胡桃も理解できるはずだ。卵焼きが甘いのも、つるつる滑る雪の道も

    すぐに好きになった。しかし、あの梅のようなものが朽ちて後、この薄茶色の実になるのは、

    いまだによくわからない。
    わからなくていい。

    胡桃は硬い風を持っているのだから。

     

     

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    かのんのらくがき 『義風の俳句手帖』 2/4


      流灯や父の生業継がざりき    義風


    「大工という職業を嫌いぬいた私の少年時代が甦ってくるのだ。」

    (義風)
    大工が嫌だったのでも父を厭うていたのでもないのは後の、

      冬萌や父は大工を全うす      義風


    に見えるように思う。
    さて、私は自他ともに認めるファザコンで、世の中に父ほどの男性がいるだろうか・・・

    などと思いつつ、でも恋をして結婚もして、今にいたる。(笑)
    現在父と(忘れていましたが母とも)同居しているが、年齢を重ねて、いわゆる「じいちゃん」と

    なっても、私の中の男性の、というよりもヒトの基本形は父のような気がする。
    父の勤め先の関連会社に就職し、それなりに仕事をしていたころ、

    父が、
    「あれが男だったらな・・・」
    と言っていたと聞き、ようやく大人になったような、それでいて、

    女であったことを、まこと残念に思ったような記憶が今もある。
    はたして今、父は娘に満足しているのでありましょうや?
    問えばきっと、「ま、いいでしょ、」と答えるのだろうなぁ。


       アダムより生れし骨なり月皓々   佳音


    父には娘が二人。息子が二人であればきっと「娘があったら・・・」と言ったのであろう。
    そう、父もただのヒトである。しかしそのただのヒトが特別であるのが父と娘、そして

    母と息子なのだ。
    その定義がすべてのヒトに当てはまるとは言わない、言えないが。
    娘の父、義風氏、如何でありましょうや?

     

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    かのんのらくがき 『義風の俳句手帖』 3/4


      萩括る男のかひな容赦なし   義風


    「括られている萩を見たことはあるが、男が萩を括っている、その現場に出合ったことは

    ない。」(義風)
    え?、そうなのですか?てっきり萩を括ってお詠みになったのかと。(笑)
    この句以降、「萩」といえば「男のかひな」。ことに今年の我が家の庭の萩の元気なこと。

    白と紅と咲き乱れるさまを見るたび、この句が浮かぶ。
    紅の攻撃的な華やぎと対象に白のたおやかな風情、まして当方男のかひな(腕)ではなきゆえ、


       白萩のこぼれ乱れも諾へり   佳音


    でもきっと、白のほうがしたたかに底力があるのだろうな、何でも。
    そうつぶやけば女の鎖骨はきゅっと笑うのである。


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    かのんのらくがき 『義風の俳句手帖』 4/4


      居酒屋のけふの淋しさきりぎりす   義風

           独りかと問ふ秋の夜の月鈴子     佳音


    「やがて、こうなったからには仕方ないと腹を決めることにした。」

                               (義風)
    あるサイトで誰でも選句をしていいとのイベントがあり、どなたのものともわからず選し、

    開いてみれば義風氏ということが幾度かあり、恋文体質(?)の私は即刻恋文メールを送った。

    (でしょう?義風さま(笑))
    ありがたいことにお返事を頂戴し、句をたくさん拝見させていただくという『うれしいおまけ』まで

    ついていた。
    ところがそれが『おまけ』なんてとんでもなく、その中でも、「これが好きです」と選んだ句が、

      洗はれて白菜土間に燦とあり   義風

    なんてきれいな絵なのだろう、土と水と光の匂いがする・・・・。
    今でも、義風氏の句の中であなたの一番は?と問われたら、この句をあげること間違いなしである。

    (勉強不足でまだまだ拝見していない句があるように思うが、それらを拝見してもたぶん、きっと。)
    この句の義風氏のコメントは、『義風の俳句手帳』「冬の句」にこの句とともにある、
    透明な新しい今日の朝の光をまとって。

     

     

     

                     かのんのらくがき 了