【伊東 浩一】
奈緒さんは妹を「ビジネスの面ですごくしっかりしている」、真紀さんは姉を「すごく料理のセンスがあるし、女性らしい繊細さがある」と互いに評価する二人。姉妹は足りない部分を助け合い、試行錯誤しながら、自分たちの店の運営に情熱を注ぐ。
これらが功を奏し、徐々に常連客は増加。週末には予約で埋まる日もあるという。真紀さんは「二人でやっているのでいろいろなアイデアが浮かぶ。けんかもするけれど、言いたいことが言い合えるのがよかった。」と姉妹運営の長所を語る。
小民家風の店構えを生かし、隠れ家を意識した店の雰囲気づくりをすることも決めた。外から居酒屋とは一見分からぬよう、看板を目立たなくし、植栽も多めにした。
同時に不明確だった店の経営方針も練り直すことに。他店と差別化を図るため、地元食材を使った料理を低料金で出す店にしようと決意。伊賀肉や、近所の手作り豆腐を使った料理、地酒などを多くメニューに取り入れるようにした。
それから3年後に真紀さんが米国から帰り、本格的に店の運営に参加した。これによって、大学で経済や会計などを学んできた真紀さんに接客や経営面を任せ、奈緒さんは調理に専念することができた。
二人で店の運営を始めて一年後に真紀さんは米国に復学し、奈緒さんは一人で店をさい配することになった。しかし、一人では店全体に目が行き届きにくく、不景気もあって苦戦。「一人で店をやるには限界があった。店を維持するのにも精いっぱいだった」と奈緒さん。
奈緒さんは「このお店が好きだったので、とにかく若さに任せて勢いでやることになった。と、真紀さんも「お店は自分たちにとって生活の一部だった。店をなくしたくなかった」と振り返る。
二人とも商売のいろはを知らなかったが、店を継ぐことに迷いはなかった。姉妹にとても幼少から、両親が切り盛りする姿を真近で見てきた愛着深い店だったからだ。
家庭の事情で父母が経営を続けられなくなり、姉妹が居酒屋を継承することになったのは7年前。当初は奈緒さんがOLを辞めて一人で継ぐはずだったが、真紀さんも米国の大学を休学し、店が軌道に乗るまで奈緒さんを支えることにした。
【二人三脚で隠れ家の味】
【伊賀のおかみさん】
中日新聞 2006年1月17日(火)の伊賀版に掲載されました。